なついろ 3
□08
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どのくらい時間が経っただろうか。
通路に寄りかかって漫画本を読み漁っていると、カツンカツンという小さな足音を耳がとらえた。和樹さんのそれよりはずっと静かだ。誰だろう。行麿かな。
読んでいた本を閉じる。階段のほうに目をやる。
ぬっと現れたのは、全く知らない少年だった。
目が合う。
私はポカンと口を開けて少年を見ていたが、その少年は一瞬の驚きの後、すぐにキッとこちらを睨んできた。
「何者だ!」
大声が地下牢に反響する。
私は縮こまった。何と答えればいいんだろう。
「えっと、あの、怪しい者じゃないんです。その、私は、えっと……」
「怪しいな。よし、お前が犯人だ」
「は?」
少年がツカツカとこちらに近づいてくる。きちんとした身なりをしているが、おそらく私と同じくくらいーーせいぜいプラスマイナス3くらいだろう。生意気そうな瞳が、私を離さない。
思わず後ずさった。
この少年は、犯人と言った。何の話だ。
「犯人め。大人しく捕まれ!」
「待って。何の話よ。人違いじゃない?」
「うるさい!」
少年が一気に距離を縮めてくる。ガシッと腕を掴まれる。かなり力が強い。痛い。
「ちょっと、何するの! 離してよ!」
「うるさい。さっさと着いてこい。上でゆっくり話を聞いてやる」
「だから、全然何の話してるのかわからないんだって! 痛い!」
少年によって、私の腕が無理な方向へ曲げられようとする。
本当に折られる。
誤解を解かなければ。
「だから、私は……」
「その手、離してくれるかな」
気づかないうちに少年の後ろに現れた影が、手を振り払う。
「女性に乱暴は感心しないな」
「行麿!」
ものすごく高そうなスーツに身を包んだ、いつもと雰囲気が違うクラスメートの姿がそこにはあった。