なついろ 3

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「リゾラート城って、どこにあるの?」
「リゾラート国に決まってるだろ」

 行麿と和樹さんは、やれやれといった感じで説明を始めてくれた。

「明日、リゾラート王国第一王子小石川月麿、つまり僕の兄の結婚式が開かれるんだけど……」

 弟である行麿は、それに出席しろと何度もせかされていた。
 しかし、彼らは仲が悪く、どうしても行きたくなかったので、彼は断り続けていた。

「仕方ないから、昨日、こいつの教育係である俺が日本まで迎えに行ってやったのさ」

 和樹さんが指を弾いて行麿を指す。

 遥々リゾラートから和樹さんがやってきて説得を始めるが、結局上手くいかず、学校の中庭で口論に。和樹さんは、行麿を眠らせて連れて行くという強行手段に出ようとした。しかし、そのとき、頭上から何かが落下してきたため、失敗に終わる。

「そこまでして行きたくないかと思ったね。まさか、俺が強行手段に出ることも予想して、上から黒板消しを降らせる係を用意していたなんてね」

 いや、すみません。それは偶然なんです。

 少し腹が立った和樹さんは、昇降口を見張って黒板消しを落としたであろう人物を探した。逃げるように出てきたのは、行麿と仲がいいという、岩瀬奈津という少女──。

「行麿を捕まえるよりは、この子を捕まえたほうが簡単だろうと思った。次の日の朝、きっと拾いにくるだろうと思って中庭で張っていたら、ビンゴ。
 ちょっと岩瀬さんには怖い思いさせちゃったけど、こうして行麿も捕まえられたし、まあよかったってことよ」

「何も良くありませんよ。傷害罪、略取・誘拐罪、逮捕・監禁罪……。訴えられても文句は言えませんよ。なっちゃんに関しては、不法入国だし」
「お前が素直に帰ってきていれば、起こりえなかったんだけどな」
「それはそうですけど、計画、実行したのはあなたでしょう? 王家に雇われている身で、何やってるんですか。いくらなんでも、許されないことだ」
「いい加減気付けよ。少なくともここでは、日本人1人より、お前のほうが重要なんだよ」
「は? いつからそんな国家になったんですか? 人民は皆平等ですよ。そもそも、議会制民主主義に移行してから、王家の権力は次第に弱まってきて……」

「ストーップ!」

 私は、鉄の棒を強く握りしめて叫んだ。2人の顔がこちらを向く。
 鉄格子になるべく顔を近づけて、訴える。

「事情はなんとなくわかった。私は、行麿をおびき出すためのエサとして使われたんでしょ? じゃあ、無事おびき出せたんだから、私は日本に帰ってもいいんですよね?」
「ああ、ごめん。それはできないんだ」
「なんで!?」

 和樹さんのあっさりとした回答に、私と行麿の疑問の声が重なる。
 和樹さんは、困ったように額をかいた。

「あの機械動かすのに莫大なエネルギーいるの知ってるだろ。そんな短時間に何度も動かせないんだ。
 ──申し訳ないけど、明日の式が終わってから、行麿と一緒に帰ってくれ」

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