なついろ 2
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「ありえない……。あいつ、まじ何なの。ありえない……」
スイッチの入っていないマイクの前で、ゾンビのように呟く。
数十分前、交代時間に再びやってきた私を労って、拓磨先輩も行ってしまった。
マイクの入っているときはハキハキ明るく、入っていないときはどんよりとしたオーラを出しながら、私は仕事を全うした。
今やっている男子中学生3人組の寸劇が終わったら、閉会式。もうすぐだ。頑張った、私。行麿にはうんと高いもの奢らせてやろう。
今欲しいもので、なるべく高いものを考えていると、
「奈津ちゃん。お疲れ」
「弥生先輩!」
「ずっとやってたね」
こちらの疲れも吹き飛ぶくらいニコニコしながら、弥生先輩が近づいてくる。私は、飼い主を見つけた子犬のように、彼女に泣きついた。
「そうなんです! あいつです。行麿のせいなんです! もう、何とか言ってください!」
「大丈夫。全ては上手くいくよ」
「え?」
「あとは私がやっておいてあげるから、ステージでも見てきていいよ。一番前の真ん中の席にでも座ってね」
「えっ、本当ですか!? ありがとうございます!」
「ほらほら、早くしないと、席とられちゃうよ」
「はい!」
慌てて、一番前の真ん中の席に駆けつける。座れたことに安心していると、ふっと疑問がわいてくる。なんで私、閉会式をこんなど真ん前で見なきゃいけないんだ?
寸劇が終わる。クエスチョンマークを抱きながら、閉会式が始まるのを待った。
ところが、スピーカー越しに聞こえてきた声が言ったのは、全く別の言葉だった。
「はーい。ここで、飛び入り参加があります。我が放送部のイケメン男子2人による、ミニコンサートです。ぜひ楽しんでくださいね!」