なついろ 4
□10
1ページ/1ページ
「え! 行麿くん、また放送するの?」
「そうだよ。次の月曜日。また聞いてもらえると嬉しいな」
「きゃー、すごい!」
私と真理佳の一番近くでご飯を食べているグループが盛り上がる。
コソコソと行麿に確認する。
「どういうこと? 弥生先輩が来たの?」
「いや、拓磨先輩が弥生先輩から伝言を頼まれたって。台本はまた送るってさ」
「何それ。このタイミングで私と行麿って、弥生先輩何を考えて……」
「弥生先輩は何も知らないから仕方ないだろ。ちょうどいいさ。おびき寄せて取っ捕まえてしまおう」
「いや、実は、先輩は……」
楽しそうに物騒な言葉を吐く行麿に、私は言い淀んだ。行麿は何か言いたげにしていたが、チラリと周りを見渡し、
「ここじゃあ内緒話はできないでしょ。じっくり放送室で話そうじゃないか。久しぶりにね。
……ってことで、来週の月曜日、よろしくね、なっちゃん!」
最後だけわざとらしくニコニコと言って、彼はいつものグループのもとへ去って行った。
「……真理佳、どうしよう。聞いてたでしょ」
「ちょっと待って、奈津。逃げられたかも」
しばらく静かにしていた親友に改めて向き合うと、彼女は忙しそうにスマホを操作していた。
「この前見せたツイート、行麿くんにも見せようかと思って探してたら、あのアカウント見当たらないの。多分ブロックされたんだ。それか、アカウント消したか」
「えっと……」
いろんなことがありすぎて、頭の整理が追いつかない。
事実としてあるのは、弥生先輩が私と行麿の組み合わせ当番を入れたことと、彼女にアカウントの存在が知られてから数日で、そのアカウントが私たちの前から姿を消したということ。