なついろ 4

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 情報過多。
 真理佳に写真を送り付けてきた人が「大崎拓磨被害者の会」の人間で、その会長が弥生先輩……。

「……実は弥生先輩にこのこと話してて、さっき放送室で『お手ふき』の名前出したら慌てて帰って行っちゃったんだよね」
「それって、まさか、このアカウントの正体は……」
「いや……。それなら、お手ふきの名前を聞く前に慌てるか、聞いても慌てないふりができると思う、さすがに」

 信じられない。

 被害者の会ということは、元彼女や思わせぶりな態度を取られた人たちの集まり。そこにあの優しい人が所属しているなんて、しかも会長だなんて……。

 私は、今まで一体どう思われていたんだろう。

「じゃあ、会員の誰かがそんなわかりやすい名前を使って嫌がらせをしてたなんて、ってことかな」

 昼休みの喧騒が遠く感じる。私たちの周りだけとても静かな気がした。

「そういえば、今回の放送はリクエストなんだっけ。リクエストボックスの存在なんて放送部の奈津ですら忘れてたんだから、複数のリクエストが寄せられるなんてこと、ある?」

 懐疑心に溢れた真理佳が低い声でどんどん恐ろしいことを口にする。
 自作自演、そう言いたいんだろうけど。

「それこそ意味わからないよ。最終的にペアは変えてくれたし」
「言われたときは奈津は嫌な気持ちになったでしょ。お灸を据えるってやつ。最終的に変える権限を持ってるわけだし」

 昼休みの残り時間を確認して、モソモソとお弁当をかきこみ始める。

 あの放送室で泣いた日、俯いていた私には見えないところで彼女はどんな表情をしていたのだろうか。
 指先の感覚が薄くなる感じがする。気を抜けば震えてしまいそうだ。
 そんなわけないと思いたい。




 お弁当を食べ終え、歯磨きまで終えた頃には、昼休みも終わりそうだった。

「お、岩瀬、放送お疲れ! 良かったよ!」

 体育館にバスケをしに行っていた男子集団が戻ってきた。気さくな高橋くんに、人見知りらしくぼそぼそとお礼を返していると、行麿がその集団の後ろのほうについて教室に入ってくるのが見えた。
 ブレザーをかかえて顔を火照らせた運動後特有の格好をした少年は、こちらに気づき近づいてくる。

 今3番目に会いたくない人の襲来に、不自然に身構えた。
 ちなみに、1番目はもちろん弥生先輩、2番目はなんとなく拓磨先輩だ。部活崩壊だな。

「お疲れ、なっちゃん。良かったよ」

 王子様スマイルを浮かべた行麿は、そんな私に気づいているだろうに自然に声をかけてきた。
 ありがとう、と私は自然に笑えていただろうか。
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