なついろ 4
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放送を終えて教室に戻ると、先に昼食を食べている真理佳と合流する。いつも放送当番の日は他の友達と食べていることが多いが、今日は一人だった。
「お疲れ〜。良かったよ」
「ありがとう」
「大丈夫だった?」
「何が?」
労いのあとによくわからない質問をする親友を軽く流し、お弁当を取り出す。
「お疲れのところ悪いんだけど、ちょっと重大な話してもいい?」
「何。いいよ」
真剣な顔の真理佳は、周囲を見回して近くに人がいないことを確認した。
よく見ると、先に食べていたはずの彼女のお弁当はあまり減っていなかった。いつもは遠慮せずに食べているのに。
「うちのTwitterに写真送ってきたアカウントあるじゃん。そのアカウントの昔の投稿見てたらこんなのあって」
見せられた画面には、おしぼりのような写真のプロフィール写真の横に『お手ふき』の文字。その下に、
『othkあって良かった』
という投稿の文。
日付は1年ほど前のものだった。
「o t h k……?」
「多分、お手ふきのことなんだと思うんだ」
またお手ふきの話だ。
先程の弥生先輩の行動を思い出して身構えてしまう。
真理佳いわく、"o te hu ki" の頭文字を取ったのではないかと言うこと。Twitterに個人情報を書き込むときにはこんな具合にわかりにくくするらしい。真理佳→mrkみたいに。
「へえ、『ふ』ってfの方がしっくりくるけどな」
「そうだよね。それに、普通のお手ふきのことならこんな風に伏字にする必要ないじゃん。ってずっと考えてたんだけど、思い出しちゃったの、今日の放送聞いて」
今日の放送?
中華まんの話を聞いて?
「いや、内容は関係なくて。othkで略される組織が校内にあったなって。奈津には言いづらいんだけど」
真理佳が重そうに口を開ける。
「大崎拓磨被害者の会」
「えっ」
「O大崎、T拓磨、H被害者のK会。アルファベットで略されるようになって、『お手ふき』って読み方がついたんだろうね。
本当言いづらいんだけど、行麿くんファンクラブの次に大きい校内非公式団体と言われてるんだわ」
絶句する私に、彼女は続きを躊躇うかのようにお弁当をつつく。
三口ほどの白米が運ばれたとき、彼女はもごもごしながら言葉を続けた。
「で、何で放送聞いて思い出したかって言うと、それの会長が放送部長の橘弥生先輩だと言われてるから」