なついろ 4
□03
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「奈津……」
翌日登校して真っ先に現れたのは泣きそうな顔を真理佳。
右手に握られたスマホを覗くと、昨日のものと思われる私と行麿の写真が写っていた。昇降口を出て並んで歩いている私たちの後ろ姿を、校内から撮ったものだった。
同じ人から送られてきたのだと言う。
既に真理佳に知らされていたらしい行麿と目が合う。
「……」
「……」
私たちは特に何も言わなかったが、しばらく距離を置くことを決めた。
そのはずだったのに……。
「あ、弥生先輩、お疲れ様です」
昼休みに放送室に行くと部長の姿があった。今日は私の当番なのに、どうしたんだろう。
我が校では昼休みの最初20分間、放送部が一昔前のヒット曲のオルゴール音源を流すことになっている。私のクラスではあまり誰も聴いていないが、上級生の教室では結構いい雰囲気を出しているらしい。
放送部の4人が1週間ずつ交代でその業務をしていた。弥生先輩が当番を間違えたというわけではなさそうだ。
「奈津ちゃん、お疲れ。実は昼の放送についてリクエストがあったから来週お試しでやってみようと思って。その相談」
音楽を流し始め、機材のそばを離れた。彼女が待つミーティングテーブルの椅子に腰を下ろす。
「放送部の横にリクエストボックス置いてあるじゃない、一応。ここ数年使われたことなかったんだけど、最近になっていくつか似たようなリクエストが届いてて。
その内容が、放送部のメンバー2人1組でのラジオが聴いてみたいってものなのよ。お試しで来週やってみようかなって思ってて。
まず私と拓磨がやるから、そのあと奈津ちゃんと行麿くんでやってみない?」
私の目は完全に泳いでいたと思う。弥生先輩が首を傾げてこちらを窺っている。
「あっ、一応台本というか軽く流れみたいなのは用意するし、数分でいいから。『今日は何とかの日です』みたいな感じに……」
私が喋ることに抵抗を感じていると思ってフォローしてくれるが、暖簾を腕押ししている感触を感じたらしい。
「……何かあったの?」
じっと見つめられると逃げられないような気がした。
気がつくと涙が一粒零れ落ちていた。
「弥生先輩〜」
「何何。もー、よしよし」
彼女は私を抱き寄せると頭を撫でた。温かくて柔らかくて、そのまま抱きついてしまった。
「行麿と……会いたくないです」