なついろ 1

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 幼いころ、悪いやつらに襲われていたところを助けてくれた男の子のことを忘れられないお姫様。

 しかし、両親は勝手に隣の国の王子様との婚約を取り決めてしまう。

 お姫様はショックを受け、家出。

 そこで、また悪いやつらに捕まってしまったお姫様。

 今にも殺されそうになったとき、助けに来てくれたのはあのときの男の子。

 実は、その男の子が隣の国の王子様だったのだ。

 こうして2人は結婚し、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。
――


「ざっと言うとこんな話。何か質問ある?」

「……真理佳、ベタすぎない?」

 放課後の空き教室。今この空間にいるのは、教卓に手をついて得意顔の真理佳と、一番前の席に座って苦笑いする私。そして……

「この話って、真理佳ちゃんが考えたの?」

 私の隣の席に座っている、王子様役の小石川くん。

 3ヶ月間同じ教室にいたはずだけど、今日初めてまともに見た気がする。
 身長は私と同じくらいで、男子としては小柄な方だ。童顔で、目が大きくて色白で、まあ、夢中になる人もいるということは納得できる。


 私の好みじゃないけど。


「一応私が考えたよ。あ、でも、リゾラート伝説は意識したけど」


「リゾラート?」


 彼と私の声が重なる。
 なんだ、そのリゾートを言い損なったような単語は。

「やっぱり聞いたことないか。
 うちのおばあちゃんが言ってたんだけど、昔日本の近くにリゾラートっていう島国があったんだって。その国の王子様と日本の内親王の間でこんな話があったらしいよ。
 でも、私もおばあちゃんからしか聞いたことないから、本当かどうかは限りなく怪しい」

「真理佳のおばあちゃん、都市伝説とか噂話、大好きだからね」

「そう。それにね、その島は日本のことを怒らせたらしく、日本の呪術師によって封印されたそうだよ。怪しいにも程があるよ」

 やれやれといった彼女の口調に、ニヤニヤしながらいろんな話をしてくれた彼女のおばあちゃんがよみがえる。
 相変わらずだな。私はクスクスと笑った。

 ちらっと隣を見ると、小石川くんは驚いたように目を丸くしていた。きっと、そんな面白いおばあちゃんがいるなんて信じられないんだろう。

 私たちの笑い声に、チャイムが重なる。

「そろそろ帰らなきゃね」

 真理佳がスクールバッグを背負って、教室の入り口へと向かった。

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