なついろ 3

□13
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 彼らが、大きな常緑樹の陰に入る。他の客から、そこは見えない。
 私も、赤い実がなっている小さい木に隠れる。

「……お前は来ないのかと思っていた」

 ボソボソと押し殺したような声が聞こえる。行麿のそれと似ているが、少し低い。

「僕だって来ないつもりでしたよ」
「ふーん」
「で、何ですか。こんなところに連れ込んで」
「……また妙なのを連れているようだが」
「は?」

 思わず息を殺す。

「何回繰り返せば気が済む? 今度のお気に入りはあの鈍くさそうな召使いか」
「……何の話をしているのかさっぱり」

 行麿の声のトーンは変わらない。
 私の心臓は、バクバクとうるさく音をたてる。

「気づいていないわけがないだろ。お前が気にしているあれは偽物だ。せいぜい注意するんだな」
「へえ、それはご親切にどうも」

 月麿さんがイライラしているのが伝わる。

「何もわかってない。そんなことだからいつも騙されるんだ。例のヒロミさんのときと全く同じ手口じゃないか」
「違います」
「前回はスパイで、今回は爆弾魔か。お前は人を信じないくせに、一度心を開いた相手にはとことん甘い。だから狙われるんだよ」
「だから……」
「どうせお前にまとわりつく者には不純な動機しかないってこと、ヒロミさんから学ばなかったのかよ」

 パリン。
 会場のどこかでグラスの割れた音がする。
 一瞬の静寂の後、再びガヤガヤとうるさくなる。

「……失礼します」

 喧騒にかき消されそうな声で告げ、行麿は建物の中へ逃げるように駆けていった。

「……」

 盛大にため息をつきながら、月麿さんはパーティーの中へ戻っていった。

 私は、しばし呆然としたあと、弾かれるように建物の中へ向かった。

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