なついろ 2
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「王様だーれだ? ……はい。私が最初の王様ね」
一人楽しそうに弥生先輩がニコニコと手の中のジョーカーを振る。
「じゃあ、1番と3番がキス」
「えっ、もうそんなノリなんですか!?」
いつもよりも楽しそうな彼女の笑顔に、私はかなり焦る。
私の右手には、スペードの3。
いやいやいやいや。何を考えているんだ、この先輩は。私たちは健全な高校生だぞ?
「なっちゃん、わかりやすいなー。1? 3?」
「3ですけど……」
「へえ……。1は?」
なめるように弥生先輩が男2人を見比べる。
今更ながら、スペードの1を持っている人は、この2人のどちらかであることに気付く。
2分の1。
どちらの感情も、読めない。
一瞬の沈黙。
そして、
「あー、弥生先輩、鬼畜だな!」
ひらりと行麿の手からトランプがテーブルに落ちる。黒い模様が真ん中に一つ印刷されているそれは、スペードの1。
ほっとしたような、残念なような感情に、ため息とともに肩を下ろす。
「残念だったね、拓磨先輩じゃなくて」
左側からぼそりと聞こえてきた声に、ゆっくり目を向けた。薄ら笑いを浮かべている行麿。思ったよりもずっと冷たい表情にヒヤリとしたが、かろうじて睨みつける。
「別に」
「あっそう」
つまらなそうに彼は鼻で笑った。と思ったら、またころりと表情を変える。
「弥生先輩、おかしいですよ。王様を除くと3人しかいないのに2人を指名してこの無茶ぶりとか……。絶対、僕のこと歓迎してませんよね」
「あのね、行麿くん。王様ゲームはふつう、このくらいの人数でやるものだし、もちろん、すごく歓迎してるよ。
だからこそ、王様の命令は絶対だよ」
相変わらず楽しそうな弥生先輩。明らかに、順接でつないではいけない内容だった。
彼は、苦笑して視線を私に移した。
「王様の命令が絶対なら、仕方ないな」
再び、彼は表情を変えた。それも、かなり悪い表情に。
「恨むなら、弥生先輩ね」