僕の弟は、ジョングクは、誰かに「せんのう」されてしまったみたいです。




僕たちは普通の兄弟でした。父さんは僕たちが幼い時からいません。理由は知りません。母さんは僕たちが小学校5年生の時、僕たちを置いてどこかへ行ったっきり帰って来ません。理由は知りません。
だけど寂しくはありませんでした。母さんはいつか帰って来るし、僕には弟がいました。
僕が泣くと弟は優しく抱き締めてくれたし、おでこにキスをしてくれたし、涙を拭ってくれました。僕は弟が好きでした。弟も僕が好きでした。僕たちは普通の兄弟でした。






そんな弟が変わってしまったのはいつからだったでしょう。僕を、冷たく、蔑むような、憐れむような目で、見るのです。避けるのです。誰かに「せんのう」されてしまったのです。

部屋に盗聴器と監視カメラを仕掛け、僕の行動を一日中監視するのです。2人で出掛けると彼は常に耳にイヤホンをしており、「誰か」の指示を聞き従うのです。1人で出掛けると「誰か」に後をつけられました。ジョングクが指示したに違いありません。そして、僕が歩くたびに周りにいる人たちが弟に騙されている僕を見て嘲笑するのです。怖くて外に出られなくなりました。他にも、僕がお風呂に入る時、シャンプーの中身を空にしたり、僕に毒を飲ませようとしたり、「母さんは帰って来ない」と言ったり、僕のいない所でテレビの話をしたり、僕を見て笑ったり、僕を見ていないのに笑ったり、iPhoneのカバーを僕の知らないキャラクターの物にしたり、僕の嫌いな食べ物を好きだと言ったり。


僕の弟は、ジョングクは、誰かに「せんのう」されてしまいました。僕を見る。僕を呼ぶ。僕を笑う。僕を。僕を。僕を。


殺そうとする。

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