短編

□飾
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何やら白澤様がいそいそと動き回っている。

「何してるんですか?手伝いますよ。」

私が声をかけると、白澤様はパッと嬉しそうな顔をする。

「ほんと?それはありがとう。
今ね、お雛様を飾ってるんだよ。」

回りを見るとたくさんの人形が箱から出してある。

「いっぱい人形があって、本格的なやつですね。」

「僕はお雛様とお内裏様さえあればいいんだけどね。」

「じゃあ何でこんな立派な…?」

きょとんとしている私に、きらびやかに着飾られたお雛様とお内裏様が向けられる。

「今日は女の子のためのお祭りなんでしょ。みやびちゃんのために買ったんだよ。」

「えっ…?本当ですか?
…ありがとうございます。」

わざわざ私のために用意してくれたと思うと、自然に心が温かくなる。

「みやびちゃんがお雛様で、
ということはお内裏様は勿論僕だよね。」
「なっ、何言ってんですか。」

白澤様がお内裏様で、自分が…などと想像するのは少し恥ずかしい…。

白澤様はさらに言葉を続ける。

「ねえねえみやびちゃん。僕のお嫁さんになってよ。」

途端に自分の顔が真っ赤に染まるのが分かる。

「ちょっと白澤様っ…。それってどういう…。」

「僕はみやびちゃんのことが大好きなんだよ。」

そう言うと白澤様は私を真っ直ぐな視線で射抜く。

「ちょ、ちょっと駄目ですっ。見ないでくださいよ…!」

顔は真っ赤で、頭は真っ白で、何も考えれない。

「こっち向いて?返事が聞きたい。」

柔らかい笑顔で、でもいつになく真剣な眼差しで見つめられる。

「…その……私も白澤様のこと、好き、です…。」

「それは嬉しいな。両想いだね。」

白澤様はなんとなく返事が分かっていたかのように答えて優しく微笑み、
そのまま私を抱き寄せる。

「ずーっと愛してあげる。」

白澤様が顔を近付けてきて、そのままキスをする。

そっと触れるだけの軽いキスを何度も重ねる。

私はボーッとした頭で、何も考えず白澤様に身を委ねた。










(ほんとに一生愛してあげるからね。)
(遊びじゃないよ。)


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