kai×aichi

□深淵からの使者
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そこは何もない場所だった
アイチは辺りを見回す

「ここは…」

「ここは、君の精神世界の中だよ」

「誰…⁉」

何もなく誰もいないと思っていたら返事が帰ってきてアイチは驚いた

「君は…!」

振り向くとそこにはアイチと瓜二つの人物がいた

「久しぶりだね…アイチ」

「どうして、君が…」

「彼」に問いかけると

「君のPSYクオリアが発現したからさ…
…櫂トシキを倒すんだろう?」

「そうだけど…君の力は借りないよ」

そう言うと彼は不思議そうにアイチを見た

「どうして?
櫂トシキはリンクジョーカーの力を使っているのに?それに君はリンクジョーカーの力を使った彼に負けてるじゃないか?」

「それは…
櫂くんは操られてるだけで…!」

「彼は自ら力を求めたんだよ?」

そう言われてはっとする
…確かにあの時櫂くんは自分で力を求めたと言った
けれど…

「だからと言って僕がこの力を使ったら…!」

「櫂くんに嫌われちゃうから?捨てられるかもしれないから?
違うよアイチ」

僕等が櫂くんを捨てるんだよ…

彼はそう言うと僕に近づいてきた

「ねぇ、アイチ?
櫂くんが君が力に溺れた時に言ったこと覚えてる?」

「え…」

「彼は、さ…こう言ったんだよ
それは本当の僕の強さじゃないまがい物の強さ…だって」

言いながら彼はどんどん僕に近づいてきて手を伸ばせば触れることができる位置まできた

「でも、よく考えてみてよ…
リンクジョーカーなんて得体のしれないものの力を借りている彼とPSYクオリアという僕等の力…どっちがまがい物かなんて誰にでもわかることだよ…?」

彼はアイチの方に手を伸ばす

「…それに、君は認めたじゃないか
僕も自分の一部だと…」

さらに、彼は言い募る

「だからさ、アイチ
僕等のこの力で櫂トシキを倒しに行こう
リンクジョーカーなんて力を使っている彼に僕等が本気を出せば負けるはずがないんだから…」

その言葉を聞きゆっくりとだがアイチも手を伸ばす

「…そうだね
櫂くんを…倒しに、行こう」

そして、彼の手を取る
その時アイチの目は禍々しい光を放っていた


空間が闇に飲まれる
同時にアイチは現実世界へと覚醒した






「アイチ!
起きたか、良かった…!」

「………………」

ナオキに声をかけられるもアイチは何も答えずにゆっくりと身を起こして立ち上がる
そして、ビルの中へと入って行こうとした

「アイチ!」

ミサキがアイチの手を掴み咎めるようにアイチの名前を呼んだ

「…ミサキさん
手を離してくれませんか?」

「このまま離したらアンタまたビルの中に行くんでしょ?」

「レオン達が今頑張ってんだ
ここで待ってれば…」

「…そうしたら、櫂くんはレオンくんに倒されちゃうじゃないですか」

「先導くん…?」

小茂井がアイチの様子がおかしいことに気づいた

アイチはゆっくりとみんなの方を向く

「お兄さん…?」

「それは…」

「PSYクオリア…か」

そう、アイチの目はPSYクオリアの輝きを放っていた

「なんだよ…それ」

ナオキや小茂井はPSYクオリアのことを知らないせいで混乱してしまっている

「おい!アイチ…⁉」

ナオキはアイチの肩を掴み問いつめるが

ーーーーパンッ‼

「………⁉」

アイチはナオキの手を払いのけた

「…弱いくせに僕に近づかないで下さい」

「なっ…⁉」

「先導くん、何言って…」

「小茂井くん、君もだよ
いや、皆さんも大した力もないくせに僕の邪魔をしないでください」

「アイチ、アンタまた力に飲まれて…」

「さあ、どうでしょう?」

アイチはミサキを馬鹿にしたように笑った

「おい、アイチ!
櫂と戦った時のこと忘れちまったのか⁉」

「まさか、ちゃんと覚えてますよ…三和さん
たしか、この力は僕の本当の強さじゃない…でしたっけ?」

「なら…!」

「じゃあ、櫂くんはどうなんですか?」

「それは…」

アイチはたたみかけるように三和に問いかける

「櫂くんの使っている力に比べたらよっぽど僕の力の方がよっぽどマシじゃないですか」

「でも、お兄さんはあと一回でもファイトしたら命が…!」

「それ、本気で言ってるの?」

「だって、レオンの奴がそう…」

「PSYクオリアでリバースを解除したからね…死ぬわけがないんだよ」

「……………!」

もちろん、こんなの嘘だけれど彼等を押しとどめるには十分な威力を発揮したらしい

「…もう良いですよね?」

そう言って彼らに背を向ける
ビルの中に入る前に一度だけ振り返った

「ーーーーーーーー」

僕の言ったことの意味がわかったらしい三和さんがはっと顔を上げたが僕は気にせずビルの中へと入って行った
目指すは櫂くんのいる所

「櫂くん…せいぜい僕が楽しめるように足掻いてね…」







「…皆、さようなら」

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