本
□後藤さん
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「キヒッ…キキキキ!
も〜うすぐだぁ…もうすぐで名無しさんに会える…ねぇ」
又兵衛は名無しさんが来るのを待ち伏せていた。
文をたくさん送った。たくさん。
返事はこないが読んでくれたはずだ。
「…あのー…
もしかして、何十通も文を送ってきたのは貴方です…か…?」
名無しさんは一通の文を持って現れた。
又兵衛からの文にここに来るように書いてあったのだ。
「…!
ホントに…ホントに来てくれたんですねェ…。
俺の事覚えてるぅ?1年前に1度会ってるんだよ?その日から名無しさんの事が頭から離れてくれないんですよぉ
まさかホントに来てくれるなんて…ねえ」
「わ、私は貴方の事なんて知りません!」
「でもさでもさあ、来てくれたって事は
名無しさんは又兵衛さまに気があるって事なんじゃないんですかぁ〜 ねぇ」
「ち、違います…!正直、文を何度も送ってくるのをやめて欲しくて!差出人が不明でしたから…!」
又兵衛は名無しさんの話しなどもう聞いてはいない。
祝言はどこで挙げるか、子供は何人欲しいか、名前はどうするか…独り言のように早口でブツブツ呟いている。
「いい加減にしてください!かえります!」
すると下を向いていた又兵衛が首を傾げた。
そして目を見開いて、
「…そうですねぇー…かえりましょうかぁ、
又兵衛様と一緒に、ねぇ」
そう言って名無しさんの首後ろを殴った。
気絶した名無しさんを大事に抱えて又兵衛は歩き始めた。
「さぁ、今日から夫婦ですねェ
1人目は、女の子がいいですよねぇ
ねぇ」