本
□柴田さん
1ページ/1ページ
「勝家め、またあの女中を見ておる」
「気味の悪い妖風情が…
ああやって物陰からジッと見ていればあの女中も迷惑だろう」
私は廊下の影から女中の名無しさんを見ていた。
話かけようとは思わない。
ただ、姿を見れればよかった。
花の咲くような笑顔が私に向けられたら、と思ったが
どうせ、私の事など知りもしないだろう。
お市様は私の手からすり抜けて行ったが
あの女中だけは他の男には渡したくない。
私は影から見守っています。
名無しさん
どうかどこにも行かず、私の中での恋人でいてくれないか。