ワンピース

□出会いと幻
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そんな3人を不思議そうに見遣る少女に村長は「おいで、ティー」と一言かけ、村長の声にティーと呼ばれた少女はとてて、と駆け寄り相手の隣へあくまで顔は村長の方を向けたまま戸の方に正面を向けて立った。



「皆さんが見たのはこの子じゃないかね?この子はわしの孫じゃ…ちょいと特別な子でなあ…」

「えっと…ウィンガル・K(キッシュ)ティルト・です」



戸惑いつつもぺこりとお辞儀をして挨拶をすることろを見ると村長の育ての良さが見受けられる。



「……能力者か。」



じっと挨拶をするティルトを見ていれば一言漏らしたそれ。
それは”悪魔の実”を食らった人物だということを指しており、ローの言葉に村長は目を細めて頷いた。



「この子は幼き頃に”ユラユラの実”を食べた子でな、一定距離にいる相手に幻覚、有幻覚を自在に見せることができるんじゃ。ただそれを人前ですることはあまりないのでな、この島に来たお主達をどこか気に入り、歓迎したんじゃろう…のぅ?ティー」



離し終わればティルトの方を向き優しげに微笑んでみせる村長。
そんな相手にティルトはこくこくと頷いてはにへらとゆるんだ笑みを見せる。

一通りを見ていればこんな小さな子すらも能力を使いこなしているのかとローの後ろでペンギンとシャチが驚いていればふとローがティルトへ近づいて相手の背丈に合わせるように剣を支えに使うかのようにしゃがみじっとピンクかかった茶色の瞳を覗き込んだ。



「お前―…」

「よォ、爺さん。お孫さんは元気かよォ?」



そうしてローが口を開いた瞬間、野太い声がローの言葉を遮るようにして村長へと声をかけた。
玄関の戸口に立って声を掛けてきた体格のいいにやにやとした笑みを浮かべる男はティルトを見るなりにぃーっと口角をさらに上げる

しかしその口元も見慣れるロー達を見れば悪態をつくように曲がり、「んだァ?コイツ等ァ」とあからさまに不機嫌そうに眉を寄せる。

そんな男に話を遮られイラついたローがティルトから視線を外し立ち上がった。



「………」



ティルトはそんなローのコートの先を無言でぎゅっと握ると男には見えないように小さく男へ指先を向ける。

しかしそれはローの手によって下ろされ、それまで敵を見るような目をしていた目をきょとりと瞬かせて横目で此方を見遣る相手を見上げた。



「人の話の邪魔するんじゃねェよ…”ROOM”」



眉を顰めて相手を睨らむように見るローは自らの能力であるROOMを発動させ、ティルトに離れるよう指示すると剣を振るい男を横真っ二つに切り離した。

勿論能力を発動させているため血など出る筈もないがそれでも幼い子供には目の毒。

そんなことも気にかけずローがティルトの方を振り返ると、ローのすることを予測していたペンギンがティルトの目を覆っていた。



「え?え?お兄さん?」

「うおおおお!!?おれ、おれの体があああ!!!???」



ティルトは何が起こっていたか見えていなかった為不思議そうに声を上げ、その一方で切られた男は切られたにも関わらず死なない、且つ血も出ず別れた状態でその場に自分の体があることの不思議で野太い叫びをあげる。



「お兄さん見えないっ」

「あっ」



視界が塞がれていることにむすりとしてティルトが無理矢理ペンギンの手を取り払うと、目の前に見えたのは刀をしまうロー、そして手をわたわたさせる男の上半身。



「ふあぁぁ!!なにそれすごいすごいっ!大きなお兄さんも私と同じ能力者なんだね!」



それを見るなり普通の子供なら驚愕するような風景に自分と同じ能力者を見た喜びも兼ねてはしゃぐティルト。

流石幼いといっても変わり者の多い能力者、目を覆っていたペンギンもまさかの反応に改めて能力者なのだと心で密かに呟いた。
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