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□ue,15.5 瞳の奥
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「‥‥何なんだあの目は。」
彼女の身体は強張って動けないでいたし、きっと雑務しかやらないような下っ端軍人だろう。
そんな一人の女が、その女の目がどういうわけだかちらついて離れない。
「あの目は、あの目はまるで‥‥─」
彼は知っている。
自分が彼女のあの目に何を感じているか、知っている。
ただ、苛つく。
不快だからだ。
あの目ではなく、彼女でもなく、あの目と対峙した自分が、だ。
「何故あの目を己に向ける!!」
押し殺すように叫んでも、手を振り上げても壁を殴る気になれなかった。
もやもやと嫌な気持ちにおそわれる。
「己はあの目を知っている。どんなときに表れる目か知っている。」
彼はあの目を見たことがある。
まさにあのときのあの場所、軍に恨みを抱いたあの日あの場で。
あの目は、仲間達がしていた目。
軍に怯えながらも立ち向かう目、戦火から家族や子供を守ろうとする目、生きようとする目だ。
地下の暗さが彼の心の動揺をより大きいものにする。
「‥止めてくれ」
誰に呟いたのか、それはどこにも届くことなく闇に消えた。
己れはあの目を守ろうと生きてきた。
あの目を殺した奴らに復讐してきた。
なのに何故己れの前にあの目が立ちふさがる?
何故あんな軍の少女にあの目ができる。
わからない
わからない
己れは、あの目を救うために来たんだ。
あの目を恐怖させるためじゃない。
あの少女には、もう会いたくない。
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ただ、教えてくれ
何故お前はその目をする?
何故その目ができるんだ