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□ue,2o.5 司令部の夜
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―ってわけだ。わかったか?」
ヒューズの問いかけに誰も応えなかった。
名無しさんの事情を知るヒューズ、ロイ、リザ。
いま聞かされたハボック、ブレタ、ファルマン、フュリー。
これだけの人がいながら司令部の部屋は静まりかえっていた。
ue,2o.5 司令部の夜
「お前等にも話して置いてもよかったんだが、ロイに預けたのもとりあえずだったからな。」
俺的には、とにやにやして付け足すヒューズ。
ロイは自分の方を見てくる彼を一瞥するもやはり何も話さない。
どこか、魂の抜けたようなうつろな瞳で遠くを見ている。
「あの、ところで名無しさんが出てったのは‥?」
おずおずと手を挙げるフュリー。
「俺が名無しさんを中央に連れて行こうとした。まあ、コイツが反対するのはわかってたがな。悪のりで名無しさんは昇進の道具だって言ったんだよ。」
俺らにしちゃいつもの冗談だが、いやなタイミングで聞かれちまった。
明るい調子だが、ヒューズは悲しそうに眉を寄せている。
そんなんじゃ誰も責めることはできないだろうにとブレダは思った。
きっといま一番落胆してるのは大佐だが、一番怒っているのはハボックだろう。
ホークアイ中尉は呆れているし、フュリーは戸惑っている、ファルマンは何か対策でも巡らせているだろう。
俺は、いま一番悔しがってる。
司令部を飛びだしていく名無しさんを引き止められなかった。
理由がわからず本気で追いかけれなかったというのもあるが、それ以前に俺は見たんだ。
今にも泣きそうな、戸惑いと絶望感を抱き合わせたような彼女の表情を。
あんな表情を見て、そんな名無しさんを引き止められるわけがない。
引き止めるべきだった。
でも迷いが生じた俺が彼女に追いつけるわけはなかったんだ。