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□e,16 お説教
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目の前で次々と繰り広げられた出来事に
ただただ言葉を失って見ていた私はすっかり忘れていた‥‥
‥資料庫を抜け出してきたことを──
e,16 お説教
“無能”ネタでひとしきり笑い終えた私はヒューズさんが戻ってくるのをぼけーっと待っていた。
「名無しさん!」
びく!
背後から聞こえたロイの声に名無しさんは身体を堅くした。
怒られる!
間髪入れず怒られる!
嫌だなぁ‥
そんな気持ちを胸にぎこちなく振り返る。
勿論諸事情により顔は直視できない。
そんな私に大佐は目の前までくるとこともあろうか私を持ち上げた。いや抱き上げた。
「う、え!?ななぁ!?」
「‥もう少し女性らしい反応はないのかね」
いや、無理でしょう
だってこれって所謂お姫様抱っこだ。
私初めてなんだもの!!!
「むぅ‥初体験。」
「‥その言い方は誤解を招くから止めなさい。」
「でも何故お姫様抱っこ‥」
すると彼は少し変な顔をした。
「膝からこんなに出血しているのに気が付かなかったのか?」
「え‥?」
名無しさんは首を傾げてふと自分の膝に目をやる。
「─‥わ、痛!痛い!痛たたたぁ〜‥‥」
人間の身体って不思議だ。
怪我に気が付いた途端に痛みがやってくるのだ。
こんな両膝からダラダラ出血してるのに‥
‥あぁアレか、憲兵を突き飛ばして一緒に吹っ飛んだときだ。
「抜け出した理由は後できっちり聞かせてもらうからな。」
あ、やっぱり?
ところで私の火事場の馬鹿力もそろそろ限界だ。
お腹が空いて力がでません。
どうやら私は安心したらしい‥
力が入らない身体も
重くなっていく瞼も
逆らうことなく
受け入れて眠った─‥
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