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□e,14 傷の男
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あの時身体が動いてたら私は何かしたのかな‥?
‥きっと何もしなかった
‥きっと出来ることはなかった
e,14 傷の男
「んとー、とりあえず大通りにいけばいけばいいかな‥?」
かなりの不安を胸に外に出たけど、意外と道は覚えていたようで私はすんなりと大通りに出た。
「時間が時間だからなぁ‥お店やってるかな?」
とりあえずあてもなくぶらぶらと歩く。
「君!‥こんなところで何をしているんだい?」
「へ‥?」
声のしたほうを振り向けば一人の憲兵が声をかけてきた。
「もしかして君も捜索を頼まれたのかい?でもいくら人手がないからといって女性に‥」
あぁー、なるほど。
私が軍の制服着てるから話し掛けてきたんだ。
あの私の制服はさすがに目立つから大佐が用意してくれた軍の制服。
何の好意か、前にリザさんのを借りて短くしたのと同じ長さのミニスカート。
きっとただのエロ親父だけど私もこの長さがいいお年頃だし、何より通常サイズが似合わない!
だからどっちかっていえば割と気に入ってる。
「えっと‥捜索ではないのですけど、‥‥捜索って?」
「エルリック兄弟ですよ。今この辺を錬金術師ばかりを狙う傷の男≠ニいう男がうろついているのでマスタング大佐から彼等の捜索命令が出ているんです。」
「傷の男‥?」
「タッカー氏殺害の疑いがある男ですよ。額に大きな傷があることしかわかってないんですが‥‥どうかしたんですか?」
その名前を聞いただけで、身体が─‥全身が震えだした。
恐怖からか怒りからかわからないまま、私はその場でしゃがみ込んで自分の腕を握りしめていた。
「具合が悪いのかい?それなら仕事場に戻ったほうが‥‥あ!いたいた」
‥嫌だ。
なんでこんなに私の身体震えて──‥
そこで一度思考が止まった。
憲兵の先程の言葉を思い出す。
『額に大きな傷があることしかわかってないんですが‥‥』
名無しさんは目線の先にいる人物に瞳を震わせる。
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