初代×雲

□pioggia
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さらさら、さらさら…


あぁ、今日もまた…


雨が降る…―――






=== pioggia ===






「んー…、」


まだ日も明け切らない、空が紫色に霞み始めてきた時刻

いつものように、目を覚ます


「っし…今日も仕事しますか」


朝起きて、顔洗って歯を磨いて着替えて…

朝食の準備に取り掛かる

きっちり7人分の朝食

それぞれの好みに合わせて


「―――…っと、おはよーさん」

「…相変わらず、早いな」

「プリーモこそ、雲がいっつも寂しがってる」

「どうも…眠りが浅いからか、明け方になると目が冴えてしまうのでな…」

「眠りが浅いって…ちゃんと寝てないってことっすか」

「充分睡眠は取っている、ただ…それが人より少ないだけだ」

「あっはは、オレもっす」


言いながら、出来たばかりの朝食を出してエスプレッソを淹れ始める

毎朝この2人でテーブルを囲むことが当たり前になって来ていた

ただ、雨は雲より先には食べないのだが


「きちんと朝食を取るようになったのは、雨が来てからだな」

「この国は朝食を取る習慣がないから、最初は驚いてましたね」

「だが、朝食を取ると一日の活力になることがわかった」


それでも、朝は軽いものを

サラダにパンという、本当にシンプルなものだ

もちろん、パンも雨の特性

雲に食べてもらう物は全て自分で毒見をしてからにしているほど


「…唯一、俺の敵わぬところだな」

「そりゃ、年季が違うっスから」

「お前より早く、雲に出逢えていれば良かったのだがな」

「それじゃぁ、俺はここにいないかも知れないじゃないッスか」

「む…それもそれで困るな」

「ッハハ、んじゃオレは朝稽古の時間なんで」

「毎日毎日、ご苦労なことだ」

「これも、仕事ですから」


残り6人分の食事にひとつひとつ蓋をすると、剣を手に取り屋敷の中庭へと移動する

ひとり残されたジョットは、静かにコーヒーを口に運ぶ

自分が早く起きるのは、雲が起きるまでに仕事をなるべく片付けるため

雲の前で忙しい姿をさらしたくないから

それだけジョットは雲に入れ込んでいる


「…出逢い方は、それぞれだったが…」


それでも、皆、何かしらで雲に引かれている

それぞれの天候になぞられた守護者達は、雲がないと存在できない者も居る

その中で一番典型的な雨は、むしろ、雲がいないと生きていけないとすら言えるかもしれない


「…さて、俺も仕事するか」


時刻はまだ日が昇って間もない頃

屋敷の中心にある中庭から、素振りの音が響いてくる

この国の、朝が始まった




 
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