初代×雲

□fulmine
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大空の機嫌が悪いとき、雷鳴轟き、嵐が来る

まさに今、その常態と言っても過言ではないだろうね

僕はただ、機嫌が直るまでただ只管縮こまって待ってみた

でも、一向に機嫌が良くなるような傾向に無い

どうしたら良いんだろう

君と一番長く一緒にいたのは僕だから、僕が何とかしなきゃいけないのにな


「……」

「――…なんだ、雲」

「ぇ…」

「俺の顔をじっと見つめて…恋煩いか?」

「違う」


あぁでも、いつもみたいな軽口は叩いてくるんだけどね



=== fulmine ===




窓を叩きつけるように降っている雨

雷も鳴ってる

風も強い

こんな日に外に出ようなんて思わない

僕は、屋敷にあるジョットの執務室にいた

ソファーに膝を抱えるようにして座って丸くなって…

さっきからジョットはずっと机に向かって書類と格闘してる

せっかく僕が屋敷に来てるのに…

風が吹いて窓を鳴らし、雨が窓を叩く音がするのに、すごく静かな時間が過ぎる

手土産にと思って持ってきた包みを開けて、中身を取り出す


「ねぇジョット、プリン持ってきたから食べようよ」

「ん…」

「そろそろ小腹空いたでしょ?」

「ん」


素っ気無い

なんか、すごく…


「……寂しいよぅ


膝と腕に額を押し付けて、小さく呟いた

自分で、口に出してしまったことに少し驚く

ジョットに聞えてたらどうしよう

仕事なんだから、我侭言ってられないのに

僕だって忙しいときはジョットのこと蔑ろにするのに


「………ハァ」

「!」


突然、息を吐いたかと思ったらジョットが椅子から立ち上がって、僕の正面のソファーに移動してきた

やっぱりさっきの、聞えてたのかな

ちょっと恥ずかしいかも


「どうした?そんな体勢で食べるのか?」

「え…」

「プリン、作ってきたのだろう?」

「……うん」


もともと、料理は得意

小さい頃から暗殺に気をつけてたからかな、自分で家事は出来ると思う

つい2,3年前までは、信じられる人間なんて居なかったから…


「雨、止まないね」

「そうだな…嵐、か」

「ジョット…?」

「もしかしたら、今日は嵐の守護者を見つける絶好のチャンスなのではないか?」

「え」


また、それ

確かに、守護者はまだ雨と晴と、僕の雲の3人だけだけど…

あと残ってるのは、嵐と雷と、霧


「でも、こんな嵐の中…」

「嵐の中でなければ、出逢えぬものかもしれないぞ?」

「それもそうだろうけど……」

「よし、これを食べ終わったら行くとするか」

「え、何処に?」

「そうだな…隣国にでも行ってみるか」

「隣国…こんな嵐の中?」


隣国まで、そんなに距離は無い

この国は本当に小さくて、子供の僕が治められるくらいだからね

多分、全国民合わせても1万人とか、行かないんじゃないかな?

マフィアも、このボンゴレだけだし

まぁ、ボンゴレはこれからも拡大していくけどね?


「一人で行くの?」

「あぁ、問題ない」

「ボスが一人でフラフラしてたら危ないよ」

「まだ名の通らぬファミリーのボスに、誰が刺客を放つと?」


それも、そうかも知れないけど

でも、一応僕だって守護者なんだし


「わからないじゃないか」

「それでも、今いる守護者は皆出払っている」

「雨がいるよ」

「あれはお前の側に居させないと俺が心配だ」

「じゃぁ僕も行けばいいでしょ」


守護者として、ボスを支える事が出来なきゃ意味が無い

プリンを食べ終えたジョットがスプーンを置くと立ち上がる

僕の背後に歩いてきて、僕はそれを目で追った

ぽす、っと頭に何かが押し付けられる


「…?」

「お前は風邪が治ったばかりだろう、晴が言うには肺炎を起こす寸前だったらしいではないか」

「…言うなって言ったのに

「ん?」

「なんでもないよ」


言うなって言っても、僕がここに顔出さないと心配してすぐに誰かに聞くんだ

風邪引いてたのは本当だけど、2,3日で治ったし

それくらい顔出さなくたって、気にしないはずなのに


「嵐の中、外に出たりしたらまたぶり返す、今日は屋敷の中でゆっくりしてろ」

「……すぐ、帰ってきてよね」

「大丈夫だ、夕刻までには必ず帰る」


そう言って、マントを羽織ると執務室から出る

その後を追って、エントランスホールまで見送りに出た

扉を開ける前に、僕の方を振り返って、僕のあごを掴んで上を向かせて唇に軽く自分のそれを落とした


「大人しく待っているんだぞ」

「……うん、ちゃんと、帰ってきてね」

「当然だ、お前がいる場所が、俺の帰る場所は、雲の所だからな」

「またそういう恥ずかしい事を…」

「では、行ってくる」

「……いってらっしゃい」


 
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