初代×雲

□逃避行
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「なぁ雲よ」

「…なに」

「お前そろそろ仕事が多くなる時期ではなかったか?」

「あぁ…うん、そうだね」

「そこでだ、たまには私が手伝いをしようと思ってな」

「…は?」

「私とともに、逃避行と洒落込もうではないか」

「…いや、洒落込んではいないとおもうよ」






=== 逃避行 ===







それは、ある年の12月頃の事


「プリーモ…プリーモ?」


そろそろ冬期休暇の時期

マフィアといえども、やはり休みはほしい

そういう願いを持った初代ボンゴレは12月の最後2週間と1月の最初1週間の間を冬期休暇に定めている

もちろん、部下達は冬期休暇だといって家に帰るものは少ない

本当に下っ端の、雑用程度しか出来ないような部下達はそうそうに家に帰り静養を取る

しかし、幹部の者たちは皆、このボンゴレの屋敷が家と思っているため、“家に帰る”事をしない


「どーしたー?嵐」

「あぁ、雨か…プリーモのお姿が見られないんだが、何処へ…」

「あぁ、そういえば雲もいねぇな…どっか買い物か?」

「俺に何も言わずにか?!」

「アッハハ、嵐は右腕名乗ってるんだもんな、知らないとヤバイな」

「く…あの浮雲野郎プリーモと何処へ…」


嵐、と言われたその青年は顔いっぱいに怒りを表現する

雨、と言われた青年は、それに笑いながらボスの執務室に入っていく

ふと、机の上にある手紙に気が付いた


「おい」

「あぁ?」

「お前宛、じゃね?」


そう言って指先に挟まれた小さな封筒

嵐はそれを思い切り奪い去ると書かれていた文字は確かに嵐宛

それは、初代と嵐にしか読めない文字


「な?」

「……」

「で、なんて書いてあんの?」


後ろからその手紙を覗き込む

でもやはり読める文字ではない

初代と守護者はそれぞれがそれぞれにしか分からない文字を作っている

情報が漏れないように

もちろん、読んだら速攻燃やすのが常だ


「…」

「嵐…?」


文章を読んでいた嵐の肩がふるふると震えだす

次の瞬間


あんの雲野郎おおおおおおおおおおおお!!!

「うぉ…っ」


いきなり目の前で大声を出されて、咄嗟に耳をふさぐ

怒り心頭

今の嵐にこの言葉ほどあうものは無いのではないだろうか


「あぁぁっむかつく!あの野郎マジぶっとばす!」

「ちょ、落ち着け嵐!なんて書いてあったんだよ、プリーモからだろ?」

「あぁそうだ、でもな、内容が内容なんだ」

「俺には読めないのな」

「……」


嵐は手紙に火をつけると灰皿に落とす

全部燃えたのを確認してから雨に向き直った


「内容はこうだ」


『しばらく雲と逃避行することにした。
何もないとは思うが、もし何かあったら雲の鳥を飛ばせ
私が行くまでの指揮は嵐に任せた
では、年末には戻る』


「…って、書いてあったのか」

「あぁそうだ」

「…プリーモが…雲と?」

「……」


腕を組んで、目を瞑って、何かを考えているような嵐

対する雨も、眉間に皺を寄せ、顎に手をあてている

不意に、目が合って


「「あんの雲の野郎……っ」」


許すまじ

いつも気の会わない雨と嵐が初めて同じ事を思ったとか




  
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