初代×雲

□雲居の空
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アドリア海に面した場所で空を仰ぐ

澄み渡る大空がその瞳に映っていた


「―――…なぁ、お前は知っているか?」

「……何を」

「海の色を…海の蒼が空の蒼を映した色だと云う事を…」

「………聞いた事は、あるよ」


抑揚無い会話

不毛な会話

意味を成さない会話

しかしそれでも、普段のこの二人の間には余りにも足りないもの


「空は…どこまで続いているのだろうな」

「…………地球上のどこでだって、空の無い場所なんてないよ」

「それもそうだな、では…あの雲は」

「―――…」

「雲は、空を漂っている…あの雲は…一体何処まで行くのだろうな」


目を細め、意地悪気にいう

まるで、試しているかのように

感情の籠っていないその瞳を自分より身長の低いその青年に向ける

冷たい印象を与えるその双眸はしかし、何よりも忠実にその意思を表していた


「雲は、生まれて消えてを繰り返して…自分の好きなように動いている」

「…」

「でも、それでもいつも、何処までも…ずっと、大空と供に在る…」


そういうと、青年は自分よりも背の低い青年に跪き、右手の甲に口付けを落とす

意地悪気な表情で口角を吊上げ、部下を見た青年は笑った

空を仰いで目を閉じる


これは、掛け言葉

大空に忠誠を誓うか、否か

それに、供にいると答えたのだ


「そろそろ戻ろう、雲よ」

「…そうだね」


海を背にして歩いて行く

どこまでも続くであろう道を歩む




数年後、早々に引退をした大空は…

雲を連れて日本へと渡ったのだという

あくまでも噂に過ぎないのだけれど――…




いつまでも、何処へでも…

大空と供に―――…



 
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