初代×雲

□per sempre
1ページ/2ページ



昔一度、目の前の男に訊ねた事がある

答えを聞いて、なんと愚かなのかと思った


目の前の男が…そして、自分が―――…


「何故それほどまでに、冷酷になれるのですか…?」


呟いて、目の前の男は眼前に広がる屍から視線をそらし、俺を見た

肩越しに見つめられ、それでも伝わる空虚な視線


「何故、そう思う…?」


温度の感じられない言葉

正直、怖いと思った

氷塊が背筋を滑り降りるような感覚


「――答えてみろ、    」


名を呼ばれて、意を決する

呼吸を整えて思っていたことを口にする


「冷酷さは、ボスに必要なことだと思います…」


色の感じられない瞳がこちらを見据える

肩越しで疲れないのか、なんて思ってしまうが、今はそれどころではない


「しかし、冷酷すぎると部下が脅え、たじろき、逃げて行く者もいます」


事実、目の前の男の恐ろしさに逃げていった部下は多い

知っているからこそ、何故そこまで、と思う

しかし、冷酷なのにわけなんていらないだろう

生まれついての性格なら、仕方がない

でも、知っているから


「あなたはそんなに、冷酷な方ではないはずです…」


優しくて、暖かで、今日だって部下の一人が殺されただけで相手のファミリーを壊滅

誰にも告げず、誰の助けも借りようとせず、一人だけで

自分は、ただ見ていることしか出来なかった

介入することなんて出来なかった

息をのむほど、綺麗な姿

まるで踊っているかのようなその舞台に、自分は上がることはできなかった


「ク、クク、ク…そうか、私はそんなに冷酷には、見えないか」

「そういう、わけでは…」


肩を震わせ、喉の奥で笑う目の前の男に冷や汗をかく

目の前にあるのは、絶対的な存在感

バサリ、と肩からかけているロングコートが翻り、目の前の男が身体ごとこちらを向いた

そして、想いもよらない言葉を聞いたのだ










「お前は絶対に裏切らない、そうだろう?」










思わず、耳を疑う

しかしそれは自分が信頼されているのだということ


「私がいかに冷酷であろうと、お前が裏切ることはない

去るものは追わない

追う必要もない

必要なのは忠誠心

私が信頼できるか、否か

私を信じられるか、否か

それだけだ」


絶対的な存在

忠誠を誓うには充分過ぎるほどの…


「そうだろう…?リボーン」

「―――Si.Boss.」


そして俺は、生死の壁を越え、ボンゴレに忠誠を誓ったんだ





_____finis.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ