初代×雲

□雨のち曇り…霧が晴れて大空広がり
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「ほんっとうに、一種の得意技としか思えんなっ、雲!」

「…好きでなるわけじゃないよ、晴」

「当たり前だ、好きで病気になられては仕事が増えて仕方が無い」

「…まぁ、確かにそうだけど」


ベッドに横になり、額に濡れたタオルを乗せられている少年…雲が、情けないとでもいいたそうに息を吐く

白衣に眼鏡をかけた、灰褐色の短髪の男…晴は、呆れながら大きな木の箱の引き出しを開ける

紙に包まれた粉薬を差し出した


「う〜…その、漢方っていうの、苦いんだよね」

「良薬は口に苦し!おれの国で言われている言葉だ」

「…ふぅん」


タオルを抑えながら上半身を起こす

水と一緒に流し込む


「う〜…」

「呑んだら安静にして寝てろ…明日には良くなる」

「…うん」

「それじゃぁおれは部屋に戻るが、何かあったら雨に言って呼べ」


腕を組み、壁に背を預けて立っていた雨が、その言葉に反応して顔を上げた

雲と目が合うと、いつものように笑顔を向ける

それを見て息を吐くと、晴は椅子から立ち上がる


「ではな」

「うん、ありがと…晴」


雨が扉を開けると、晴は礼を言って出て行く

パタン、と扉が閉まった


「大丈夫か?雲…」

「うん、平気…そういえば、ジョットは?」

「プリーモなら、今仕事に出てるのな」

「…そっか、忙しいもんね」

「なのなー、でも俺はそばにいるのな」

「……うん、そうだね」


床に膝立ちになり、汗ばんだ額をタオルで拭う

そのタオルを冷水に浸して絞り、再び雲の額に戻した


「ありがと」

「これが俺の仕事でもあるのなー」

「うん、そうだね」


―――どこで、間違ってしまったんだろう…


いつもいつも、不意に思う

こうすることが当たり前になっている

雲のそばには、必ず雨がいる

雨は、雲がいないと生きられない

地に落ちれば、ただの水になってしまう

だから、雲に縋り付いているしかない

これしか、生きている意味が無い


―――でも、それは僕も同じか


「ふぅ…」

「寝る?」

「うん…寝ないとジョットに怒られちゃうからね」


夜が更ける

そろそろ子供は眠る時間だ

あぁでも、きっとまだ霧は寝ていないだろうな、なんて思う

ゆっくりと目を閉じて、口を開いた


「おやすみ、雨…」

「んー、おやすみなー」

「…おやすみ、ジョット」


小さく呟いて、大きく息を吐く

体の力をゆっくりと抜いていけば、自然と眠りに着いていた

雲が眠ったのを確認すると、雨は椅子に腰掛ける

寒くないように、方まで布団をかけなおしてやる

ジョットがくるまで、雲を見ているのは雨の役目だ

いつ帰ってくるかわからないけれど

ずっと雨は、雲の傍にいた





 
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