†頂き物†
□いちばん。
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雲雀は無意識のうちにドアを開けていた。
瞬間、教室中が静まりかえる。
その中に一人の叫び声が響き渡った。
「きょ……っ、…ひっ、ひひひひばっ雲雀さっ!!?」
眉間の皺がより一層深く刻まれる。
「…どもり過ぎ」
恋人へと、一歩一歩近づいていく。
目の前の恋人は、自分との関係を隠したがる。
今も。
「ひ、雲雀さん…っ!!なんで教室に来るんですかっ!!」
自分への拒絶。
気に入らない。
その態度が、僕を狂わせる。
それでも、表には出さずに内に留める。
醜い、と 知っているから。
「沢田綱吉、君に用があってね…」
怒らせてしまった……。
綱吉は直感的に悟り、身体を強張らせる。
どうすればいいのか分からず、青ざめた顔で俯いていると、突然伸びてきた腕に右腕を掴まれ、立ち上がらせられて、一瞬のうちに視界が反転した。
「わ……っ!」
思わず目の前の黒をギュウッ、と握りしめる。
綱吉は雲雀によって肩に担ぎ上げられてしまったのだ。
「綱吉借りてくよ。欠席にでもしといて」
近くにいた生徒にそう告げると、そのまま教室を出て行った。
恐ろしいほどに静まりかえった廊下に、雲雀の足音だけが響き渡る。
「今日は帰さないから」
唐突に発せられたその言葉の意味を理解してしまった綱吉は赤面し、羞恥心から目の前の微かに雲雀のにおいのする温かい学ランに顔を押しつけた。
応接室に入るなり雲雀は内鍵を閉めて、“委員長”と書かれたプレートの置かれた机に綱吉を組み伏せた。
HRの開始を告げるチャイムが遠くで鳴ったような気がした。
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