夢見がち草小説2
□雨も星も輝くときに
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甘い。けど苦いし塩辛いし。
出来たときは、すごくおいしいと思ってたのに、なんて苦いんだろう。
大好きなチョコレートだけど、今日ばかりはキライになる苦さだった。
浮ついていた自分も大嫌い。
知らないうちに、今日という日の雰囲気に飲まれてしまってた。ハッピーな明日ばかり想像してたから、ダメージは相当大きい。
「……乙女のピュアな恋心、返してよ」
誰もいない教室に、涙とため息がとけた。
こんな気分だと、何をしようにもめんどくさい。かと言って、まっすぐ帰ろうとも思えない。
友達はみんな、幸せそうに笑ってた。
大好きな彼に、チョコを受け取ってもらえる、至福の瞬間を迎えられたんだ。
わたし、無理して笑った。
よかったね。かなり棒読みだった。
行き場をなくしたチョコレートを隠して、みんなを見送った。
幸せな笑顔の前で、泣けるわけないじゃない。
静まり返った教室だけが、何も言わずにわたしを受け入れてくれる。
自分の席に座って、頑張ったラッピングを一気に破いた。鮮やかなペーパーが舞う。美しく、はかなく。
掃除した床にペーパーの残骸を散らかしたまま、きれいに並べたチョコを見つめた。
これだけつくるのに、どれだけ失敗したか。納得できるまで練習したのよ?
ほら、こんなに……おいしいはずなのに。
「………苦…っ」
あんまり苦すぎて、涙が出て来た。
そうよ、フラれて悲しいわけじゃない。あくまでも、チョコが泣くほど苦いだけなの。
そうだよ、傷ついてなんかない。
他に好きなコがいるって、簡単に予想できた言葉じゃない。
なのに、どうして?
どうしてこんなに苦しいの……!
「…あれ。まだ残っていたんですか?」