Spiral Mirror

□落花翩翩
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神殿の長い廊下を不機嫌な顔で荻は歩いていた。

蟹螯を朝早く発った救世主一行を見送った後、すぐに藤と共に街を出た。本当ならば数日前に戻ってきている筈だったのだが、予定を少し延ばして滞在し、早馬で一日掛けて戻ってきた彼は溜まった仕事を片付ける為に司祭の執務室に向かっている最中。
折角気分良く帰ってきたのに、と大きく溜息を吐いてから懐の中にしまっていた守り袋を取り出す。

蟹螯で知り合った、救世主一行の一員。性別を隠して旅をしている少女から貰った、一房の髪の毛。太陽の光のような、柔らかな山吹色の髪は綺麗に編まれ、彼女が付けていた羽を象った指輪に結ばれている。
それを軽く握り締めてから荻は再び歩き出す。
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