Spiral Mirror

□Happy Birthday!!天音
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本当はこの街に滞在する予定ではなかった。
車の調子が悪くなり、アイドリングが安定しなくなった為、急遽通りかかったこの街に寄る事になったのだ。

それなりに大きなこの街は祭りの最中。
人の多さを嫌い緋炎は宿から一歩も出ず、逆に賑やかな雰囲気が好きな風雅はいつの間にか何処かに出掛け、光輝は車の不調の原因を調べるのに忙しそうだった。

祭りは好きだけど、一人で行くのはつまらないし、人酔いもする。宿の窓から通りを眺めていたらそれを見かねたらしい宿の主がこの場所を教えてくれた。

「♪遙かな空、旅立つ人、見送った僕。それぞれが歩き出す始まりの地、立ち尽くす事しか出来なかったあの日。進むべき明日が見えなくて、ただ一人迷ってた。足跡ない道探して、汚れた靴で進み始めたけど、手探りの旅路は果てなど見えない♪」

足をブラブラさせながら小さく口ずさむ。街の喧噪に巻き込まれる事なく、祭りを見られるこの場所は宿の主が言う通り、特等席だった。

「天音」

幹に寄りかかり、再び空を見上げた時、遙か下の方から声を掛けられた。
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