月魄の狼-The Requiem of War-
□4.求め、望むもの
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「じゃあ俺、政務に戻るよ。梵も早くしないと小十郎の鳴神を食らうからね!」
「あぁ、すぐ行く」
そう言って成実さんは仕事に戻って行き、成実さんの姿が完全に見えなくなった。
『仕事をほっぽり出して、何しに?』
「無性にアンタが恋しくなって会いに来た」
『…ふ〜ん』
自分に会いたかった? 会ってどうするのだろうと首を傾げた。
その行動が可笑しかったのか、ククッと笑った。
『あれから調子どう?』
「Ah?何がだ?」
『……その様子だと何も問題なさそうだね』
鉄砲で撃たれ、まともに動けないくらいの傷だった。私のチカラを持ってしても数日は起きられないのに……この人はぴんぴんしている。
あんな大怪我だったのに何事もなかったかのように歩いている。ついでに走って来たし。
思えば治療した翌日も普通に動いてたな…まぁ本人が気にしてないなら大丈夫だろう。
「神那、今暇か?」
『?……うん、これを最後に干したらね』
パンパンと洗濯物のしわを伸ばし、物干し竿にかけた。
それを好奇とばかりに、政宗はニヤリと口角を上げこれまでにない最高の不敵な笑みを浮かべた。
「今から城下に行かねぇか?」
『えっ……今から?』
「観光に来たんだろ? だったら案内してやるよ」
『ホントっ!?』
でも時雨が一人で何処か行くなって……、でも政宗と行くんだから一人じゃないよね?
人間がたくさんいる城下に行く…か。興味はあるし、心の奥底で願っていたこと。
『で、でも…仕事は?終わってないでしょ?』
「No problem.気分転換だ、気分転換」
『絶対小十郎に怒られるよ?』
「Ha!んなもん、バレる前に戻ってくりゃいいんだよ」
あぁ、今彼に何言っても駄目だ。小十郎に極殺されても知らないよ、マジで?
『分かった、行くよ…』
「そうと決まれば今すぐ行こうぜ!術解いて、銀髪になれ」
『えっ!?』
「銀髪の方がアンタらしくて、オレは好きなんだよ」
銀髪の方が、いい?………好き?
初めて言われた…
なんともいえない喜ばしさが胸を広がる。嬉しくて頬が緩んだ。
『ありがと!この色好きなんだけど、何かと目立つから……』
「隠すな、勿体ねぇ…」
ついでに目の色ももとに戻せと言われ、渋々戻すことに…
ずっとかけていた術を解き、元の色に戻す。もちろん耳と尻尾は隠して。
手を引かれ、誰にも見つからないように城を抜け出した。
こういう脱走(?)というのか……、政宗は慣れているのか、すんなり抜け出せたな。
こっそりお忍びで来て、目に入ったのはワイワイと賑やかで活気の溢れる町の風景。
一瞬お祭りでもしてるのかと思ったぐらいだった。
甘い甘味の匂い、楽しそうな人の声……これは夢に見ていた町並み。
人々が笑い、子供が楽しそうに遊んでいる……そんな光景だった。