孤高な呪術師

□2.現状把握の怪
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『なんか、生まれ変わった感じでさ……転生しました感でいればいいんじゃないかと思うんよ。なぁ、行くとこないし戦国時代から来たってんなら一緒にに住む?』

「……し、しかし…」

『俺のことは気にすんな。見ての通り独り暮らしだ』

「独り…?あの……貴方には姉上がいらっしゃるのでは…」

『……いや?俺兄弟はいない。母親は俺を産んでから身体を壊して、物心つく前に亡くなった。親父も俺が20歳になる前に死んだ…』

「……すまない」

『いや謝らなくていい。とりあえず、買い物せんとなぁ…勝家の外行きの服とか日用品とか』

「そのようなもの、私には不要だ…」

『ダメ。いるったらいるの。日用品は必須だし、俺と親父の服にだって好みとかサイズとか違うし…』


親父の服は勝家には少し大きすぎ、俺の服はどうも小さい。それに勝家の日用品も絶対不可欠だ。
金銭的に別に一人増えた所で、なんも変わらない。かなり余裕がある。
彼は「金子が…」とか言ってるがそんなん知らん。無視した。
とりあえず、買い物へ行く準備をしなければ…
着られそうな服を引っ張り出して勝家にジェスチャーを交え着方を教えつつ、現代の常識等を簡潔に説明した。


『何処のイケメンだよ…』

「池…麺…?」

『イケてる男の事。女目線からみて魅力的で「きゃー、かっこいいー!」って思う男の事な』


だってさぁ、どう見てもイケメンだろ。
首回りが広い黒のタートルネックカットソー、自衛隊とかで見る深い緑色をしたのズボン。靴は黒のクロックスを履かせてみた。
眼鏡あったら似合いそうだなぁ。うん。これでどっからどう見ても現代人……かな。


「この様な軽装で、外を出歩くのか? それに加え、刀の所持は禁忌とは…」

『今はもう戦はなくなって、一応平和なんだ。現代人はみんな弱いから素手で倒せるから大丈夫』

「数百年後の日ノ本はこれほど変わってしまったのか…」


ぽつりと呟く勝家を横目に、俺は "中身の入った竹刀袋" を肩に担ぎ、バイクのある車庫に着く。
黒いつやのあるボディーに、サイドカーを付けた愛車だ。元々親父のバイクだったが、今では俺の足だ。


『これはバイクっていう乗り物。馬より早い』

「は、はぁ…」

『あとほかにも車って言う鉄の塊みたいなヤツもある。バイクよりも速い。バイク含めてこれに一度でもぶつかると死ぬから』

「なるほど…」

『というわけで、勝家はバイクの傍についてるサイドカーの此処に乗って。ヘルメット……兜みたいなのがあるからそれ被ってな』

「……」

『どうした?』

「その……一瞬…私が浦島太郎になった感覚に陥った」

『………へぇー、戦国時代にも浦島太郎あったのかぁ〜』


浦島太郎。日本各地にある龍宮伝説の一つ。歌にもある。
亀を助けて竜宮城に行って、帰ってきたら何百年もたっていて、玉手箱開けたらジジイになったとか存在が消えたとか。いろいろな所説ある。


『…キシシッ、確かにその通りだな』


今のこいつは、お伽噺の浦島太郎とは少し違うが似たような事態を体験している。
勝家がヘルメットを被り、サイドカーに乗ったのを確認して俺もヘルメットをかぶってバイクに跨った。


『それでは現代浦島太郎の勝家。俺が竜宮城へ連れていきましょう…』


エンジンをかけ、買い物に出かける。さて、どこで日用品を調達しようかと頭の中で今日の予定を練る。
服は、商店街の方がいろんな種類があるからそこにしよう。
その他は、商店街の中にある百貨店で買うのもいいなぁ…
あっでも、最近野菜と高いからな。高かったら別の店に行こう。
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