月魄の狼-The Requiem of War-
□12.蟻なれど…
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当然 アンタは何も知らないで
当然のように優しく微笑む
でもな それが心にくる
やっかい でっかい 病は続く
きっと届かせる 馬鹿みたいな恋
12.蟻なれど…
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「政宗殿、その御仁は…?」
『あ、えと…狼哭神那です。こっちは時雨です』
「某、真田源次郎幸村と申しまする!」
元気よく幸村さんは私にそう言った。
門が壊れて時雨に部屋に連れられたから最初話す事出来なかったっけ。
幸村さんは、政宗のライバルの人で甲斐の武将さんらしい。
甲斐と言えば、武蔵の隣国だった気がする。噂もほんの少し聞いていた。けど、あんまり知らない。
「へー…俺様は猿飛佐助。よろしくね、神那ちゃん♪」
不憫な忍さん……佐助さんがにこやかに笑う。でも、目が笑っていない表だけの笑顔。
殺気を飛ばしている。怖い。それに仄かに血の匂いがする。
少し射すくんでしまったのか、無意識に政宗の背に隠れた。
よく知らない人に会うとこうしてお父さん達の背に隠れていたのを思い出す。
「おい猿、Honeyに殺気を飛ばすんじゃねぇ…」
怒気を含んだ声で唸った。時雨も牙を剥き出しにして佐助さんを睨んでいる。
「申し訳ござらいませぬ、神那殿…佐助は忍ゆえ…佐助謝らぬか!」
「あらー、そんなつもりはなかったんだけど……ごめんね?」
『い、いいえ……その…ごめんなさぃ…』
佐助さんは正しい。
こんな見知らぬ相手に敵意なんて向けない人はいない。特に忍は…
私が怖がったから……いけないんだ。そして、五人揃って城へ入る。
時雨が、いつものように人間の姿になったのは驚かれたけど、忍の変化の術だと言ったら二人ともあっさり納得した。
だだっ広い客間で、政宗と幸村さん達は向き合って座り、時雨と小十郎はその脇に、私は政宗の横に座った。
いや、強制的に座らされた。こんな私がお殿様の隣にいていいのだろうか…
「実は某…政宗殿と手合わせだけをしに参ったわけではござらん」
おもむろに、真剣な顔で幸村さんが言った。
「当初の目的は、我が好敵手である政宗殿との手合せでござったが……お館様より、この文を政宗殿にお渡しせよと命を受け、奥州に訪れた次第」
懐から文を大切にそうに取り出し、前に差し出した。
小十郎が手に取り、政宗の手に渡る。文を開き内容を読む政宗。
「……Fum, 同盟か」
「今豊臣と織田に動きはこざらんが、勢力は拡大するばかり。
お館様は織田・豊臣に備え、各武家に同盟を結ぼうとしておられる。政宗殿、我が武田と同盟を組んでいただきたい…」
「答えはNoだ。伊達は誰とも組まねぇ…」
そう言った政宗の言葉に、しょぼんとする幸村さん。佐助さんもやっぱりか、と諦めた様子だ。
『いいんじゃないかな?同盟組んでも…』
「What!?」
私を除く全員が目を見開いておどろいている。
視線が集まり萎縮してしまうが、話を進める。
『人はアリと同じだよ』
「Ant?」
「蟻……でござるか??」
疑問符を浮かべる二人。静かに話を聞いていた時雨はハッとし、何かに気づく。
『アリは、女王アリを中心に雄アリ・働きアリで世話をする。自分たちより大きな虫を大勢で狩る』
これは人間に限らず、妖怪にだって当てはめられる話だと思う。
この惑星(ほし)からしてみれば、アリのように小さな存在だ。
『それは獣も同じ…特に狼。群れの仲間と子どもや仲間の為に、協力して自分達より大きな獣を狩る。大きな獲物を取るには一匹のチカラでは敵わない、自殺と同じ。けど五匹、十匹で相手をした方が、確実に獲物を狩るから……』
言葉につまり時雨を横目で見ると、彼は優しく微笑んだ。
私の言いたいことが分かっているんだろう。
『だから、大勢で獲物を取った方がいいと思うなぁって…一匹でも多く仲間がいた方がいいと思ぅ…』
語尾があやふやになってしまったけど、だいたい言いたいことは言えた。