月魄の狼-The Requiem of War-
□2.狼少女と黒狼
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夢見ぬ邂逅 巡り合う光と影
きっとこれは運命(さだめ)られた結果で
ずっと前から決められていたのだろうか?
セカイが変わる 替わる
セカイが廻る 回る
2.狼少女と黒狼
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「筆頭ー! 何処ですかーー!!」
「筆頭ぉお!!」
少し薄気味悪い森の中。蒼い具足を纏う男達が、 "筆頭" と主君を呼び続けている。
この森は、妖怪が出ると噂されている。そんな根も葉もない噂があるからか、人々はこの森には近づかない。
しかし、彼らは行方不明の主君を必死に探している。
「ま、まさか……筆頭妖怪食われたんじゃねぇか…?」
一人の男が、声を震るわせて言った。
「ば、馬鹿!……筆頭に限ってそんなことあるわけねぇだろっ…」
別の男が男の言葉を否定したが、彼も声が震えているのが分かる。
「こんなに探しても見つからないんじゃあよぉ…」
「弱音を吐くんじゃねぇっ!!」
突如飛んで来たドスの効いた怒声が男の言葉を遮った。振り向けば茶色い羽織りを纏い強面の男が立っていた。
彼の名は、片倉小十郎。<竜の右目>と呼ばれる伊達の軍師である。
「あの政宗様が簡単にくたばる方じゃねぇだろ」
狼狽える部下達をいなすように、小十郎は言った。
「まだ日は高い。俺は向こうを探してくる……オメェらはそっちを探せ」
「「は、はい! 了解ッス !!」」
小十郎の一喝により男達は指示された方へと走って行った。
「……まったく、あの方は」
どれだけ人を心配させるのかと、ハァーと深いため息を吐いた。
弱気な部下に、喝を入れたものの…正直な所少し焦っていた。
奇襲をかけてきやがった魔王・織田には勝ったが、先陣を切り敵陣へと出陣した政宗様がいない。
政宗様の性格から、逃げる敵将を追いかけ森の中へ入って行ったのだろうと俺は考えた。
雨が降り、一端軍を引かせ斥候を放った。少しして……敵将と数人の足軽の亡骸、六本の刀・六爪と兜のみが落ちていた。
そして夜が明け、今に至る。
「この小十郎……貴方様に、もしものことがあれば…──」
―ドドドドドドッ!「!?」
なんの音だ? 音はだんだんと近づき、目の前が土埃が舞う。
敵か? 音は止んだものの、土煙の所為で視界が悪い。