月魄の狼-The Requiem of War-

□1.竜と狼
1ページ/6ページ


one-eyed blue dragon(蒼い独眼竜)


何処まで行くの、聞こえますか?


あとどれだけ傷つけばいいだろう


あとどれだけ吠えればいいだろう


最初から分かっていた "お前"に出逢うこと


1.竜と狼
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽





ザァア……────

雨が降る。
さっきまで晴れていた空がぐずつき、冷たい雨が降る。
時刻は逢魔が時間地かだが、辺りはとても薄暗い。
そんな悪天候の深い森の中。一人の男が、おぼつかない足取りで近くにあった木に背を預け寄りかかった。
蒼い陣羽織、右目を覆う黒い鍔の眼帯となんとも目立つ格好をしている。
彼の名は、伊達政宗。奥州を治める若き伊達家の当主である。


「Shit……こりゃあ、ヤベェな…」


腹部より流れる熱い液体──血に染まる手を見ながら青年は呟いた。
いくら押さえても血が止まらず、流れ続けている。
鉄砲──種子島に撃たれた傷は、そう簡単に止まるはずがない。
蒼い鮮やかな陣羽織が真っ赤に染まっている。
奥州領内に侵入してきた織田軍、だが魔王と謳われる織田信長は不在。ただの小さな分隊だった。
逃げる敵大将と、そのお付きの足軽等を追いかけ止めを刺したが…
一人の足軽が最後の力を使い、鉄砲で腹を撃った。迂闊だった。
先陣切り過ぎて軍から離れすぎた所為で、此処が何処か分からないで迷っている状態だ。
自分が歩いて来た後は、血の滴った道が出来ているほど……


「……うっ……ゲホッゴホッ……」


口の中に鉄の味がする。目が霞む……そろそろ限界か。
血を流し過ぎたのか、頭が朦朧とし雨の所為で寒い。



もう……体が……指一本動かせねぇ。



此処で、オレは……終わるのか。



まだだ…まだオレには………



―…〜〜♪…〜〜〜♬―


「……?」


幻聴、か?
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ