竜ノ子、拾いました。

□1.Dragon egg
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◆1.Dragon egg◆


《私、中学を卒業したらこの家を出ます》


中学3年の夏か秋の始まりだったか。私、狼哭神那が唐突に発した言葉に、両親は驚いていた。
担任にも相談したし、これから通う高校は家から遠い。
それでもその高校へ行くこと自分で決め、アパートも借りて、卒業したその日に家を出た。
学校から徒歩10分足らずで着く小さなアパート。少し痛んだり錆びていて古びているが、実際には気に入っている。
バイト可能な学校だったため、自分でバイト先を探していたら、心優しく何かと顔の広い両親が知り合いに「娘を働かせてくれ」と頼んでくれた。
親なんだからこれくらいする、と両親は言った。正直ありがたかった。
最低限の荷物や家具を引越し屋のトラックから運び出してもらい、家具を配置した。
荷物をすべて部屋に運び出すと、私は部屋いっぱいになった段ボールと数日間格闘した思い出が頭に浮かび上がる。
親元を離れ、バイトをする一人暮らしをし始めて2か月経った頃だ。

















**********

学校も終わり、今日はバイトもない放課後。


『さてさて、夕飯どうしよっかな〜。買いに行かないと』


一人暮らし用の小さな冷蔵庫は空っぽだし、中身がないとなんか寂しい……
近所の激安スーパーに着き、何となく「オムライス食べたい」と思ってその材料を籠の中へと放り込んだ。
ついでに牛乳と魚肉ソーセージを数本か追加し、お会計。1000円にも満たない金額だった。
両親からの仕送りとバイトで溜めたお金で生計を立てている私には嬉しい。
買ったものを事前の持ってきておいたエコバックに入れ、ルンルン気分で家路へと急ぐ。
買い物帰りの帰り道。賑わう商店街を通り、住宅地を抜ける。
少し先に二階建てで灰色の古びたアパート(我が家)が眼前に見え始めた。


『ん?』


アパートのゴミ捨て場を通り過ぎようとした時。
椅子や大型の家具といった粗大ごみの中、大きなソファーの上で猫が一匹、なにかを転がしているのが目に入った。
テニスボールとかソフトボールだったら何も思わなかった。けど、その猫が転がしているモノが"ボール"じゃなかった。
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