月魄の狼-The Requiem of War-
□2.狼少女と黒狼
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沈黙の末、フッと彼が口角を上げて笑い、
「……Sorry.少し熱くなりすぎた。ま、今日は城に泊まれ。特に行くトコがねぇなら此処に居ていい、You see?」
優しさのこもった目でニヤリと笑みを見せた。あぁ、このヒトはどんだけ俺様なんだ…。
まぁ、今夜の宿が見つかればいいや。それからどうするか考えよう、うん。
『とりあえず、泊めて下さりありがとうございます、政宗様』
「政宗でいい。敬語も無しだ」
『えっ、そんなこと……。分かった、ありがと政宗』
嬉しかった私はニコリと微笑んだ。彼──政宗から旅の話を聞かせてくれと頼まれた。
里を出て色々な国や領を巡り歩いたことや、それぞれの国の豊かさ。
旅をしているときの出来事を赤裸々に話した。楽しそうに聞いてくれて良かった。
あっという間に時間が経ち、時刻はもうすぐ夕方(此処に来た時間が多分昼近くだったような気がする)
政宗は小十郎さんに私達を部屋に案内するように言った。
大広間を出て、しばらく小十郎さんに付いていくと部屋についた。
私達の為に二部屋用意してくれたが、時雨は自分はいいから私に部屋を用意させてくれと言う。
『あの、本当に私達みたいな者が泊まっていいんでしょうか?』
思い切って声をかけた。実際泊めてくれたのは嬉しい、けど内心ちょっと不安だった。
「政宗様が仰ったことだ。俺は家臣として従うだけだ、何も言わねぇよ」
「貴様、あの主に苦労してるな…」
少し憐れむような口調で時雨は言う。
小十郎さんは仕方ない、それが政宗様なのだと苦笑した。
「本当に感謝している。政宗様を救ってくれてありがとうな、俺がもっとしっかりしないとな」
『そんなことないです! 小十郎さんは十分しっかりしてますよ。今から挽回していけばいいじゃないですか』
いきなり自分の言った言葉を否定され、目を丸くしてフッと微笑んだ。
「変わったヤツだ。俺のことは小十郎で構わねぇ、普通でいい」
『そ…う?……分かった。ありがとう』
小十郎は何処かへ行ってしまった。多分、政宗にお説教するつもりなんだと思う…
二人だけになった部屋で、時雨はいつもの獣の姿に変わった。
『やっぱ、この姿の方がしっくりきてるね』
【俺もどちらかと言うとこの姿の方が安心します】
『でも、城の中じゃ極力人間の姿の方がいいんじゃない? 時雨は大きいから色々不便な気がする』
【まぁ、そうですね。めんどくさいですが仕方ありません】
でもこの姿が楽なのでと付けたし、獣の姿のままでいた。
私は荷物を部屋の脇に置き、腰に差していた黒靭(クロユギ)を畳の上に置いた。
暇なので、先に大刀・冥月(メイゲツ)から鞘を抜き、手入れをして時間を潰す。
小刀・夜月(ヨヅキ)の手入れを済ませてしまうと、特にすることもなくただ時間を過ごした。