月魄の狼-The Requiem of War-
□2.狼少女と黒狼
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『ムキャっ!!?』
不意に体にかかった浮遊感。
驚いてしまった私の眼前に、何故かニヤリと口角を上げて笑う彼の顔があり、横抱きされている。
つまり、私は女の子なら誰もが憧れる "お姫様抱っこ" 状態。
「お持ち帰りに決まってんだろうが」
これでもかと言うドヤ顔を見せた。ぇぇぇえええええ!!?
口をポカンと開けたままの私。頭は驚きと恥ずかしさから混乱していた。
予想外の行動に小十郎さんは驚いたが、諦めたかのように深いため息を付いた。なんだか恥ずかしい…!!
【貴様!姫を離せ!!】
「そう焦んなって……悪い様にはしねぇ。それか、これから何処か行く所でもあるのか?」
くっ、と悔しそうに口籠る時雨。さっき流浪人と言ってしまったから行く所なんてないよね。
【確かに特に無いが……では、どうしろと?】
「Ah?オレの城に来りゃいいだろうが。泊めてやる。礼もしたいしな」
『しかし、ご迷惑では…』
だって、助けた人が偉い人とは思わなかったし……
第一さ私半妖だからね? 分かって言ってるのかな、この人はっ!
「Don't worry.大人しく来い……お前もな犬ッコロ」
【誰が "犬" だ。まぁいい、正直長旅の所為で姫もお疲れのようだし……此処は大人しくしよう】
「All right.決まりだな」
『ハァ……』
もう知らない。そんな意地悪そうな顔されたら、何も言えないよ。もうご自由にどうぞと、軽い現実逃避に入る。
『あの、このままお持ち帰りなんですか?』
「Of course」
即答ですか…時雨がめっちゃ彼を睨んでて怖い。相当気に入らないんだな…何言っても無駄だと悟り、彼に体を預けた。
「では、参りましょう。政宗様」
小十郎さんの後をついて歩いて行く(彼にお姫様抱っこされたまま)
少し開けた場所に頭が色々派手な蒼い甲冑をきたThe漢な人達が集まっていた。
「筆頭!!」と涙を流して、駆け寄って来た。漢達の迫力のあまり私は畏縮して、彼にしがみ付いた。時雨と私の姿(特に時雨)を見て驚かれたけど。
まぁ話はあとということで城へ帰還するため、馬が用意された。
時雨の背に乗るはずが……中々降ろしてくれず、そのまま馬に二人乗りすることに…
好き勝手行動する彼に対し沸々と怒りを募らせる時雨。だって牙が見えるくらい皺が寄ってるんだもの。
「しっかり掴まってろよ」
『えっ、ちょ…うぁぁああぁぁあああーーーー!!!』
猛スピードで走り出し、ふっと飛ばされないように彼の背中にしがみ付いた。