月魄の狼-The Requiem of War-
□2.狼少女と黒狼
2ページ/8ページ
【おい、餓鬼! 静かにしろと言っているのが分からないのかっ!!】
「っるせーな!! 何をしようがオレの勝手だ、なぁ?神那」
『へぇ!?え〜と……』
【姫を巻き込むな! 困られているだろうが!!】
若い男の声と女の声。そしてこの声は……!!
土埃が薄れ、そこに居たのは巨大な黒い狼と10代くらいの少女。
そして……
「政宗様!!?」
蒼い陣羽織に、黒い眼帯……間切れもなく主君の姿だった────
**********
「政宗様、よくぞご無事で」
彼に駆け寄る強面の男の人。男は三日月の付いた兜を彼に渡している。
その二人の姿を見て、良かったと安堵の笑みがほころんだ。
時雨の言う通り、般若様みたい。起こると怖そうだ……
「貴方様と言う方は! ご自分の御立場を分かっていらっしゃるのですか!!?」
「Stop, Stop…悪かった。そう目くじら立てんなよ、小十郎。Coolに行こうぜ?」
やっぱり怖い!! 背後に鬼が……背後に般若様が見えるんですけど!?
お父さんが怒った時並みに恐ろしい…。顔に傷あるし、オールバックだし、もろ893じゃん!
いきなり始まった説教に対し、彼は鬱陶しいそうな顔をしている。
「政宗様………その女と山犬は?」
<小十郎>と呼ばれた強面の人が、私達に気づきギロリと睨らむ。
『えっと、狼哭神那と申します! こっちは時雨です! ただの流浪人ですっ!』
あまりの怖さに、体が射すくまる。時雨でさえ、ちょっとビビってたらしくピクっと体を震わせた。
「小十郎、そう睨むな。怯えてるだろが…」
助け船を出す政宗さま。それでも、まだちょっと警戒されているのが分かる。
「コイツはオレの命の恩人だ。神那、オレの側近の片倉小十郎。見た目はアレだがいいやつだ」
『は、はぁ…』
【貴様の主は、種子島なんぞという銃に腹を撃たれてなぁ……死にかけの病み上がりだ】
し、時雨!! そんな余計なこと言ったら……
ほら、さらに小十郎さんの眉間にしわが寄って怖い。彼は、コイツは信頼できる側近だから変化は解いていいと言われた。
横目で時雨に確認をすれば「大丈夫だろう」と頷いてくれたので言われた通り元の色に一時戻した。
かなり驚かれたけど……当たり前な反応だよ。
そして、また黒一色に変化した。これって結構疲れる、今日は変化を解いたりしたりで忙しいなぁ……まぁ仕方ないか。
「詳しい話は城に帰ってからだ。説教はそのあといくらでも聞いてやる」
「ハァ〜……政宗様、その者達をどうするおつもりで?」
「Ah〜それはだな……───」
彼は私を見てニヤリと不敵な笑みを浮かべ、まるで面白い悪戯を思いついた子供のよう。
なにか用でもあるのかな、と小首を傾げた時───