月魄の狼-The Requiem of War-

□2.狼少女と黒狼
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【おい、餓鬼! 静かにしろと言っているのが分からないのかっ!!】

「っるせーな!! 何をしようがオレの勝手だ、なぁ?神那」

『へぇ!?え〜と……』

【姫を巻き込むな! 困られているだろうが!!】


若い男の声と女の声。そしてこの声は……!!
土埃が薄れ、そこに居たのは巨大な黒い狼と10代くらいの少女。

そして……


「政宗様!!?」


蒼い陣羽織に、黒い眼帯……間切れもなく主君の姿だった────












**********


「政宗様、よくぞご無事で」


彼に駆け寄る強面の男の人。男は三日月の付いた兜を彼に渡している。
その二人の姿を見て、良かったと安堵の笑みがほころんだ。
時雨の言う通り、般若様みたい。起こると怖そうだ……


「貴方様と言う方は! ご自分の御立場を分かっていらっしゃるのですか!!?」

「Stop, Stop…悪かった。そう目くじら立てんなよ、小十郎。Coolに行こうぜ?」


やっぱり怖い!! 背後に鬼が……背後に般若様が見えるんですけど!?
お父さんが怒った時並みに恐ろしい…。顔に傷あるし、オールバックだし、もろ893じゃん!
いきなり始まった説教に対し、彼は鬱陶しいそうな顔をしている。


「政宗様………その女と山犬は?」


<小十郎>と呼ばれた強面の人が、私達に気づきギロリと睨らむ。


『えっと、狼哭神那と申します! こっちは時雨です! ただの流浪人ですっ!』


あまりの怖さに、体が射すくまる。時雨でさえ、ちょっとビビってたらしくピクっと体を震わせた。


「小十郎、そう睨むな。怯えてるだろが…」


助け船を出す政宗さま。それでも、まだちょっと警戒されているのが分かる。


「コイツはオレの命の恩人だ。神那、オレの側近の片倉小十郎。見た目はアレだがいいやつだ」

『は、はぁ…』

【貴様の主は、種子島なんぞという銃に腹を撃たれてなぁ……死にかけの病み上がりだ】


し、時雨!! そんな余計なこと言ったら……
ほら、さらに小十郎さんの眉間にしわが寄って怖い。彼は、コイツは信頼できる側近だから変化は解いていいと言われた。
横目で時雨に確認をすれば「大丈夫だろう」と頷いてくれたので言われた通り元の色に一時戻した。
かなり驚かれたけど……当たり前な反応だよ。
そして、また黒一色に変化した。これって結構疲れる、今日は変化を解いたりしたりで忙しいなぁ……まぁ仕方ないか。


「詳しい話は城に帰ってからだ。説教はそのあといくらでも聞いてやる」

「ハァ〜……政宗様、その者達をどうするおつもりで?」

「Ah〜それはだな……───」


彼は私を見てニヤリと不敵な笑みを浮かべ、まるで面白い悪戯を思いついた子供のよう。
なにか用でもあるのかな、と小首を傾げた時───
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