長編・金木犀
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放課後になり、私はまた教室の窓から外を眺める。
今日は、幼馴染が試合をするのだそうで、楽しみだ。
しばらく幼馴染の試合を眺めていると、突然、ガラリと教室の扉が開いた。
「あー、名無しさん、さん?まだ、帰ってなかった、のか?」
突然のことで、私は動揺したまま頷いた。
「うん。巻島君は、今、部活終わったの?」
ゆっくりと、噛まないように。
ドキドキと、心臓が鳴る。ガンバレ、私。
「あ、ああ、そうっショ」
「忘れ物?」
「まぁ」
そっか、と返すと、私はまた窓の外を眺めた。
ああ、私の意気地なし。
「・・・帰らないんショ?」
「んー、もう少し、見ていたいなぁ」
私がそう返すと、巻島君が私の隣に立った。
どうか、顔が赤くなってませんように・・・!!
心臓が痛いほど鳴っていて、でも、この時間がずっと続けばいいのにとも思う。
「テニス部?」
巻島君は、私の視線をたどったのか、女テニのコートを見て言った。
「うん。私の幼馴染が女テニでね、今試合してるの」
幼馴染の話をすると、帰り道、私の応援してくれた幼馴染の声がよぎった。
「試合とか、見んの好きだったりするのか?」
「うん」
そう答えると、巻島君はもう何も言わずに、自分の席をゴソゴソと漁った後、教室を出て行った。
巻島君が教室を出ると、私は壁にもたれかかるようにしてその場に沈み込んだ。
「ああ、もう。心臓がもたないよ・・・!」
赤くなった顔に、どうか気づいていませんように・・・!
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