長編・金木犀

□6
1ページ/1ページ

放課後になり、私はまた教室の窓から外を眺める。

今日は、幼馴染が試合をするのだそうで、楽しみだ。

しばらく幼馴染の試合を眺めていると、突然、ガラリと教室の扉が開いた。


「あー、名無しさん、さん?まだ、帰ってなかった、のか?」


突然のことで、私は動揺したまま頷いた。


「うん。巻島君は、今、部活終わったの?」


ゆっくりと、噛まないように。

ドキドキと、心臓が鳴る。ガンバレ、私。


「あ、ああ、そうっショ」

「忘れ物?」

「まぁ」


そっか、と返すと、私はまた窓の外を眺めた。

ああ、私の意気地なし。


「・・・帰らないんショ?」

「んー、もう少し、見ていたいなぁ」


私がそう返すと、巻島君が私の隣に立った。

どうか、顔が赤くなってませんように・・・!!

心臓が痛いほど鳴っていて、でも、この時間がずっと続けばいいのにとも思う。


「テニス部?」


巻島君は、私の視線をたどったのか、女テニのコートを見て言った。


「うん。私の幼馴染が女テニでね、今試合してるの」


幼馴染の話をすると、帰り道、私の応援してくれた幼馴染の声がよぎった。


「試合とか、見んの好きだったりするのか?」

「うん」


そう答えると、巻島君はもう何も言わずに、自分の席をゴソゴソと漁った後、教室を出て行った。

巻島君が教室を出ると、私は壁にもたれかかるようにしてその場に沈み込んだ。


「ああ、もう。心臓がもたないよ・・・!」


赤くなった顔に、どうか気づいていませんように・・・!



 NEXT

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ