短編・巻島
□スタート!
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巻島君の声が上から降ってきた。
「うう、大丈夫、です・・・」
メンタルのほうはあんまし大丈夫じゃないけど・・・。
私がそっと起き上がると、しゃがんでいた巻島君と目が合った。
巻島君は、私が落としてしまった教材を集めると、自分の分と合わせて左腕で支えた。
そして、右手を私に差し出してきた。
「ほら、いい加減立つっショ」
その声とか表情とかが優しくて、私はしばらく巻島君の顔を眺めてしまった。
巻島君の眉が少し寄ったところで、私ははっとして巻島君の手を取って立ち上がった。
「あ、ありがとう!」
そう言うと、巻島君は私が持つはずの分の資料も持って、スタスタと先へ歩いていく。
言いたいと思った。今、言わなくちゃって・・・。
「巻島君!!」
私が大きな声でそう呼ぶと、巻島君は振り返る。
やっぱり、ちょっと不機嫌そうに。眉を寄せて。
「あ、あの、私」
少し、深呼吸。
「私、巻島君のことが」
外で部活をしている人たちの声もだんだん聞こえなくなって、私は、巻島君の目をまっすぐ見つめて言った。
「好きです・・・!!」