短編・巻島

□スタート!
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そんな毎日を繰り返していたある日。

帰りのHR後に担任に呼ばれた。友人は先帰った。


「名無しさん、部活入ってなかったよな。悪いが、今日使った教材、資料室に戻しておいてくれ」


そういう担任の後ろには巨大な地図やら何やら・・・。

え、何コレ、マジで?私がやんの?女子一人でやるんですか?

まぁ暇なのは事実なので、・・・やってやんよ!

担任はこれから会議があるらしく、もう行ってしまった。

残された私は教室で一人、ハァ、と大きく溜息を吐いた。


「ほら、さっさと終わらせるっショ」


そう隣から声が聞こえ、私の前に置いてあった教材が消えた。

驚いて顔を上げると、少し不機嫌そうな顔の巻島君。


「なんで?あれ、部活は?」

「少し遅れるって伝えたっショ」

「で、でもでも、インハイ近いって・・・」

「少しくらいなら大丈夫ショ。てか、そう思うなら早く片付けるっショ」


ほら、名無しさんはこれ持て、と言って、巻島君は私に軽い教材をいくつか持たせ、スタスタと教室を出て行く。

慌てて追いかけると、巻島君は少し先で待っていてくれた。


「あ、ありがと!」

「別に。・・・てか、嫌なら断れショ。名無しさん、いっつも断んねェからイロイロ押し付けられるんショ」


横を歩く巻島君は、前を見たまま呟くようにそう言った。


「あはは、返す言葉もございません。・・・てゆか、巻島君、私がよく頼まれ事してるって、よく知ってたね」

「あ?あー、まぁ、な・・・」


私が疑問を口にすると、巻島君は歯切れが悪そうにそう言った。

巻島君はあまりおしゃべりなほうじゃないし、私は緊張してるしで、しばらく沈黙が続いた。

あーもう、なんか話さなきゃ・・・!

そう思ったとき、私は何かに躓いた。


「わぁっ!!」


そのまま前方に倒れた私は、恥ずかしさのあまり、しばらく動けなかった。

穴があったら入りたいとはまさにこのこと。


「・・・おい、大丈夫か?」


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