短編・その他
□B
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レースを見て、正直かなり驚いた。
これ本当に人力なの?ってくらい速い。
目の前を一瞬で通り過ぎていく。
黄色いジャージの総北は、先頭のほうを走っていた。
ハコガクと、あと、京都伏見ってとこ、そして総北。この3校が争っている。
暑さのせいとは別の汗が、私の背を伝う。
最終日、私はゴール付近にいた。
息を詰まりそうなほどの熱気の中、私は黄色いジャージが見えるのを待っていた。
そのとき、総北のエースが救護テントへ運ばれたという話が私の耳に届いた。
「え・・・?」
総北の、エース・・・?って、確か・・・。
私は急いでその場から離れた。
救護テントがあるところまで着いたが、関係者以外は入れないと言われ、私はどうすることもできずにその場にとどまった。
近くのラジオが、延々とレースの状況を語っている。
今は、ハコガクの一年生と、総北の一年生が頂上を目指して競っているらしい。
しんごくん、このラジオ、聞いてる?
ねぇ、しんごくんのところの子、今、頑張ってるよ。
私は、必死でラジオに耳を澄ませた。
そして聞こえてきたのは、総北の一年生が一番にゴールしたという朗報。
思わず、涙がこぼれてきた。
ロードレースのチーム戦は、誰かひとり、チームの中の誰かが、そのジャージをゴールへと届ければ、チームの優勝になるのだと、前に東堂が言っていた。
だからこれは、総北の、しんごくんのチームの、優勝なんだ。
もうすぐ、表彰式が始まるみたいだ。
ここからじゃ、今から行っても間に合わないな・・・。
そんなことを思っていると、救護テントからしんごくんが出てきた。
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