短編・その他
□B
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「あっつい・・・」
思わず声が出てしまうくらいに暑い日だ。
今日は、インターハイ。
ハコガクのみんなには悪いけど、私はしんごくんの応援だ。
たしか、総北って言ってたよね。
ジャージは、黄色。
・・・人が多すぎて、みつけられる自信ないなぁ・・・。
はぁ、と溜息を吐くと、騒がしい声が聞こえてきた。
「なんだ、名無しさんではないか!さては、俺の応援に来てくれたのだな!!」
ハッハッハッ、と、相変わらず自身満々な様子で現れた東堂に、私は思わず眉をしかめてしまった。
「その顔はなんだね」
「いや、暑いときに暑苦しいヤツが来たもんだと」
「ハハハ!そんなこと言っていて、俺の走りを見たらさすがの名無しさんでも惚れるだろう!!」
ハァ、と溜息を吐くと、東堂の後ろから荒北が東堂の頭を思い切りたたいた。
「テメェはいつまで油売ってンだヨ!!さっさと準備しろ!!」
そう言い残し、さっさと先へ行ってしまった。
「まったく、荒北は乱暴だな」
腕を組んで不満そうにいう東堂に、私は訪ねた。
「ずいぶん余裕だね」
「余裕?ハハッ、まさか!期待と緊張で今にも心臓が飛び出そうだ!」
全くそうは見えないけれど、そうなんだろう。
心なし、いつもよりも凛々しい顔をしている。
「それで、どれだけ誘ってもレースを見に来なかった名無しさんが、いったいどんな心境の変化だ?」
「・・・しんごくんも、出るって」
「インターハイにか?」
東堂の言葉に頷くと、東堂はうれしそうに笑った。
「そうか、会えたのか」
「うん」
「ハッハッハッ!それはよかった!だがしかし!!今年も優勝はハコガクがいただくからな!名無しさんは残念だろうが、“しんごくん”が勝利するところは見れんだろう」
そう言い、スッと目を細めて東堂は続けた。
「しかし、何事も真剣になっている姿はカッコいいものだぞ。“しんごくん”の勇姿、その目に焼き付けるといい」
東堂の言葉に、私はそっぽを向きながら答えた。
「言われなくても・・・」
真っ青な空を見上げ、私は続けた。
「一応、東堂もガンバレ」
「ハッハッハッ!あまり感情がこもっていないな!!まぁ、いい!俺にはたくさんのファンの応援があるからな!!」
あっそ、と返すと、東堂は時計を見て、言った。
「ああ、さすがにそろそろ行かないと怒られるな。では、俺は行く」
「うん、じゃあ」
東堂はさっき荒北が行った方へと駆けて行った。
たぶん、もうすでに荒北怒り心頭じゃないかな。
私はその場を離れて、そろそろレースが始まるというアナウンスを聞き、しんごくんを探すのは諦めて場所を移動した。
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