短編・その他

□B
2ページ/5ページ

「あっつい・・・」


思わず声が出てしまうくらいに暑い日だ。

今日は、インターハイ。

ハコガクのみんなには悪いけど、私はしんごくんの応援だ。

たしか、総北って言ってたよね。

ジャージは、黄色。

・・・人が多すぎて、みつけられる自信ないなぁ・・・。

はぁ、と溜息を吐くと、騒がしい声が聞こえてきた。


「なんだ、名無しさんではないか!さては、俺の応援に来てくれたのだな!!」


ハッハッハッ、と、相変わらず自身満々な様子で現れた東堂に、私は思わず眉をしかめてしまった。


「その顔はなんだね」

「いや、暑いときに暑苦しいヤツが来たもんだと」

「ハハハ!そんなこと言っていて、俺の走りを見たらさすがの名無しさんでも惚れるだろう!!」

ハァ、と溜息を吐くと、東堂の後ろから荒北が東堂の頭を思い切りたたいた。


「テメェはいつまで油売ってンだヨ!!さっさと準備しろ!!」


そう言い残し、さっさと先へ行ってしまった。


「まったく、荒北は乱暴だな」


腕を組んで不満そうにいう東堂に、私は訪ねた。


「ずいぶん余裕だね」

「余裕?ハハッ、まさか!期待と緊張で今にも心臓が飛び出そうだ!」


全くそうは見えないけれど、そうなんだろう。

心なし、いつもよりも凛々しい顔をしている。


「それで、どれだけ誘ってもレースを見に来なかった名無しさんが、いったいどんな心境の変化だ?」

「・・・しんごくんも、出るって」

「インターハイにか?」


東堂の言葉に頷くと、東堂はうれしそうに笑った。


「そうか、会えたのか」

「うん」

「ハッハッハッ!それはよかった!だがしかし!!今年も優勝はハコガクがいただくからな!名無しさんは残念だろうが、“しんごくん”が勝利するところは見れんだろう」


そう言い、スッと目を細めて東堂は続けた。


「しかし、何事も真剣になっている姿はカッコいいものだぞ。“しんごくん”の勇姿、その目に焼き付けるといい」


東堂の言葉に、私はそっぽを向きながら答えた。


「言われなくても・・・」


真っ青な空を見上げ、私は続けた。


「一応、東堂もガンバレ」

「ハッハッハッ!あまり感情がこもっていないな!!まぁ、いい!俺にはたくさんのファンの応援があるからな!!」


あっそ、と返すと、東堂は時計を見て、言った。


「ああ、さすがにそろそろ行かないと怒られるな。では、俺は行く」

「うん、じゃあ」


東堂はさっき荒北が行った方へと駆けて行った。

たぶん、もうすでに荒北怒り心頭じゃないかな。

私はその場を離れて、そろそろレースが始まるというアナウンスを聞き、しんごくんを探すのは諦めて場所を移動した。



 →
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ