短編・荒北
□合わさる目
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また座っていた椅子に戻り、荒北の膝に手を伸ばす。
「洗ってきたんだ」
「東堂がウルセーからナァ」
ちらりと荒北を見上げると、早く外に行きたいのか、窓の外を見ていた。
「・・・転んだの?」
消毒をしながら訪ねると、荒北がこちらを向いた。
目が合う。
傷はけっこう痛そうなのに、荒北は痛がる様子を見せるどころか、私の問いに不機嫌そうに眉を潜めた。
「・・・ダセェから誰にも言うなヨ」
そう言って、またそっぽを向いた。
私は消毒を終えた膝に視線を落とし、包帯を巻き始めた。
「別に、ダサくないんじゃないの」
そう言うと、荒北がまた私のほうを見たのが、気配でなんとなく伝わってきた。
しばらく、お互いに無言が続いた。
時計の針の進む音が、やけにはっきりと聞こえてくる。
「はい、おしまい」
包帯を巻き終えて、私は顔をあげた。
また、目が合った。
「・・・サンキュ」
そう言い、荒北が保健室を出て行こうとする。
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