短編・荒北
□C
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それから、数日が過ぎた。
なんか、隣から視線を感じる。なんだと思いながらも放置していたら、そのうちなくなっていた。つまんねェ。
昼休みになり、俺は外で昼食を食べた。その後、教室に戻ろうとすると、教室の前で東堂と女子が何か話をしていた。
つか、今俺の名前出さなかったか?東堂。
「東堂じゃねェか。何してんだァ?ンなトコで」
気になり声を掛けると、東堂は唐突に妙な事を聞いてきた。
「荒北、うちの部で水色の自転車といったら、お前以外に誰がいる?」
「アァ?ンなのいちいち覚えてるわけねェだろ」
だいたい、なんでそんなこと聞くんだよ・・・、そう呟き何気なく東堂と話していた女子を見ると、
「名無しさん?」
なんで、こいつが東堂と話ししてんだ?
眉を寄せる俺を、名無しさんはじっと見上げてきていた。なんなんだ?
「名無しさんさんが黒髪で水色の自転車のヤツを探しているそうだ。心当たりはないか?」
あ?なんでそんなヤツ探して・・・、もしかして。
「もしかして、コンタクトのヤツかァ?」
思わず声に出してしまった。
「そ、う・・・、だけど・・・」
「アー、あん時見えてなかったのか」
また、こいつは見えなかったのか。初めて会った時といい、今回といい。思わずため息が出そうになる。
とはいえ、こいつがコンタクトを見つけたヤツ(=俺)を探していたということは、十中八九礼とかなんかだろ。
んなモン求めていない俺は、少し気まずくなって頭をかいた。
「じゃあ、やっぱり荒北君・・・」
俺は名無しさんの言葉を遮った。
「別に、どォだっていいんじゃナァイ?」
そう言い残し、俺は教室へ戻っていった。