短編・荒北

□C
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あれは、まだ中学ンときだった。

俺はそんとき野球をしていて、身体を壊して野球ができなくなったんだ。

そんで俺は荒れた。

荒れてた時期に、俺はあいつに会った。

夜中、俺は家に帰る事もなく、外をぷらぷらとしていた。

あいつは塾の帰りだったんだろう。暗い道を歩いていた。

なんとなく、俺はそいつを見ていた。

そいつは、何の前触れもなく肩にかけていたカバンを落とした。

どんだけぼーっとしてんだよ。

俺はなんだかおかしくなって、笑った。

そいつの落としたカバンの中に入っていたペンケースから、シャーペンが落ちて俺のところまで転がってきた。

俺はそれを拾い、俺にも落としたシャーペンにも気づかず教科書やらノートをかき集めるそいつのところへ向かった。


「おい」


声をかけると、そいつはビクッと肩を揺らし、俺を見上げてきた。


「落としたぞ」


そう言ってシャーペンを差し出すと、そいつは笑った。


「ありがとう」


そう言い、俺からシャーペンを受け取り、再度頭を下げて帰って行った。

その笑顔が、何故だか俺の頭から離れなかった。


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