短編・荒北
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あれは、まだ中学ンときだった。
俺はそんとき野球をしていて、身体を壊して野球ができなくなったんだ。
そんで俺は荒れた。
荒れてた時期に、俺はあいつに会った。
夜中、俺は家に帰る事もなく、外をぷらぷらとしていた。
あいつは塾の帰りだったんだろう。暗い道を歩いていた。
なんとなく、俺はそいつを見ていた。
そいつは、何の前触れもなく肩にかけていたカバンを落とした。
どんだけぼーっとしてんだよ。
俺はなんだかおかしくなって、笑った。
そいつの落としたカバンの中に入っていたペンケースから、シャーペンが落ちて俺のところまで転がってきた。
俺はそれを拾い、俺にも落としたシャーペンにも気づかず教科書やらノートをかき集めるそいつのところへ向かった。
「おい」
声をかけると、そいつはビクッと肩を揺らし、俺を見上げてきた。
「落としたぞ」
そう言ってシャーペンを差し出すと、そいつは笑った。
「ありがとう」
そう言い、俺からシャーペンを受け取り、再度頭を下げて帰って行った。
その笑顔が、何故だか俺の頭から離れなかった。
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