短編・荒北
□Bプラスマイナス0センチ
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そうして、ようやくお昼休みになった。
「昼メシ、行くかァ」
いつの間に来たのか、私の肩に手を置きながら荒北君が言った。
「あ、う、うん」
私は鞄を抱きしめるようにして持ち、荒北君の後を付いて行った。
昨日と同じ場所に着き、荒北君が木陰に腰を下ろす。私も荒北君の傍に腰を下ろし、鞄からお弁当を2つ出す。
「マジで作ってきてくれたんだ」
そう言う荒北君の声は、なんだかちょっとうれしそうに聞こえた。
「う、うん。おいしいといいんだけど」
おずおずと荒北君の分の大きいお弁当を差し出すと、荒北君は受け取ってくれた。
「サンキュ」
荒北君が無言でお弁当を開ける。
箸を手に取り、から揚げへと箸が伸びて行く。
その全てがスローモーションのように見える。
私の手も少し汗ばんできて、緊張しているんだと自覚した。
から揚げが荒北君の口の中に入る。
それが荒北君によって咀嚼され、喉を通る。
「ん、うまいんじゃナァイ」
そう言って笑った荒北君につられるようにして、私の顔にも安心と喜びから、笑顔が広がった。
荒北君はお弁当を完食した。
最後にベプシを飲んで、気がついたときには、私の目の前に荒北君の顔があった。
「ごちそーさま」
そう言ってニヤリと笑った荒北君に対して、私の顔は真っ赤だっただろう。