短編・荒北

□Bプラスマイナス0センチ
2ページ/2ページ

そうして、ようやくお昼休みになった。


「昼メシ、行くかァ」


いつの間に来たのか、私の肩に手を置きながら荒北君が言った。


「あ、う、うん」


私は鞄を抱きしめるようにして持ち、荒北君の後を付いて行った。

昨日と同じ場所に着き、荒北君が木陰に腰を下ろす。私も荒北君の傍に腰を下ろし、鞄からお弁当を2つ出す。


「マジで作ってきてくれたんだ」


そう言う荒北君の声は、なんだかちょっとうれしそうに聞こえた。


「う、うん。おいしいといいんだけど」


おずおずと荒北君の分の大きいお弁当を差し出すと、荒北君は受け取ってくれた。


「サンキュ」


荒北君が無言でお弁当を開ける。

箸を手に取り、から揚げへと箸が伸びて行く。

その全てがスローモーションのように見える。

私の手も少し汗ばんできて、緊張しているんだと自覚した。

から揚げが荒北君の口の中に入る。

それが荒北君によって咀嚼され、喉を通る。


「ん、うまいんじゃナァイ」


そう言って笑った荒北君につられるようにして、私の顔にも安心と喜びから、笑顔が広がった。

荒北君はお弁当を完食した。

最後にベプシを飲んで、気がついたときには、私の目の前に荒北君の顔があった。


「ごちそーさま」


そう言ってニヤリと笑った荒北君に対して、私の顔は真っ赤だっただろう。



 
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ