短編・巻島
□紫色のアネモネは咲き誇る
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裕介がイギリスに行ってから、もう1年以上が過ぎた。
季節はもう春だ。裕介がイギリスに発ってから、2度目の、春。
そういえば、裕介はよくマフラーを口元まで上げて寒がっていたな。
そんなことを思いながら、大学の窓から膨らみ始めた桜の蕾を見る。
裕介は長い休みになるとたまに、帰ってくる。それで、裕介の話を聞いたり、私の話をしたり・・・。
けっして長い時間一緒にいられるわけではないが、それでも、その時間が私にとってすごく幸せだ。
裕介からイギリスに行くって話を聞いたときは現実味があまりなくて、遠距離恋愛は続くのかなぁ、なんて、まるで他人事のように思ってしまった。
けれど、空港で見送るときには号泣。裕介を困らせてしまったが、時間ギリギリになるまで、裕介は私の傍にいてくれた。
そして、今私たちはまだ続いている。
電話はあまりできないけど、メールは毎日してる。
毎日といっても、短い文でのやりとりを、数回。
不安がないわけではないが、「信じて待ってろ」。
その言葉を信じてる。
桜は、満開に咲いているときよりも、散っていく様子のが好きだ。
ぼーっと、今にも咲きそうな桜を見ていると、ぽん、と肩に手が置かれた。
「もう講義終わってるよ?」
振り向くと、そう言って首を傾げる友人がいた。
「ごめん、ぼーっとしてた」
そう言って笑うと、友人も笑った。
今日私が受けるのはこの講義で最後だった。
友人はサークル活動があるらしく、そちらに向かうそうだ。
私は友人に別れを告げ、大学を出ようと荷物をまとめ外に出た。
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