短編・その他
□ライラック
2ページ/4ページ
暑い。
じりじりと照りつけてくる太陽を睨みつけ、もう夏だなぁ、なんて呟く。
旅行が趣味の母は、しょっちゅうママ友とどこかへ出かける。
引っ越しに旅行に、忙しない母である。
そんな母がこの間、沖縄まで行った、らしい。帰ってきてから聞かされたもので、驚いた。
その沖縄土産を親戚に届けてくるように任務を受け、私はこの江の島まで来ていた。
こうなったらもう水族館行っとくしかないかな。一人で行っても寂しいだけだけど。
こんな暑い中、リア充を見ていたくはない。
「あっつー・・・」
暑いし、重いし、疲れた。
どこかで飲み物を買おうと自販機を探すと、すぐ近くにあった。
土産の入ったかばんを足元に置き、自販機にお金を入れる。
こんな日はー、炭酸かなぁ・・・。
炭酸を選ぼうと指を伸ばし、直前でピタリと指を止めた。
・・・。
そのまま、私は上の段にあったスポーツドリンクのボタンを押した。
ガコン、と飲み物が落ちてくる。
その光景が、数年前、しんごくんを好きになった日を思い出させた。
→